蓄積された過労とストレスが顔面神経麻痺の引き金に
40代 女性 福岡県
耳鼻科での急性期治療が一段落したタイミングで、当院に来られました。顔面神経麻痺の評価法である柳原法(満点40点)は11点で、目と口にかなり麻痺が残っている状態でした。
口を動かすことが難しかったので、飲食ではかなり苦労されていました。少量を口に含んで麻痺と反対側で噛んだり、ペットボトルで飲むこともできませんでした。
うがいもできずハミガキも困難でした。特に、麻痺側は頬に食べ物が溜まりやすいため、「水圧で洗う口腔洗浄器」を用いていました。
また、右目を閉じることができなかったので、洗顔やシャンプー時の目の痛み、ドライアイにお悩みでした。
発症直前には、子供の病気や親族の介護、新しい仕事で毎日忙しい日々を送り、睡眠不足になっていました。以前から心の不調を抱えて心療内科にも通院されており、日常的に強いストレスと過緊張がありました。
初回来院時のお悩み
・目と口の動きを早く回復したい
初回来院時の心身の評価
・心身とも疲労困憊のご様子でした。
・右閉眼、頬をふくらます、口笛、口をへの字に曲げることができないなど、目と口の動きがほとんどありませんでした。
・顔面神経麻痺の評価法である柳原法(満点40点)は、11点でした。
・顔面神経麻痺による心の回復度を測る「FaCE Scale(フェイス・スケール、満点75点)」は18点でした。
鍼灸施術の経過
施術目的
➀解剖学に基づいて、顔面神経の働きをサポートし表情筋の動きを整えることを目的に、鍼灸施術を行いました。
②神経心理学に基づいて、脳が自ら神経回路を作り変える力(脳の可塑性)を引き出し、感覚刺激を通じて顔面の機能回復を促しました。
③顔面神経麻痺は、過労や強い緊張といった長年のストレスによって免疫力が低下し、ウイルスが活性化することが大きな引き金となります。
そのため当院では、ストレスに対する考え方を見直し、自律神経を整えて、睡眠の質を高めることを目的としました。
④また、顔面神経麻痺は、単なる顔の運動障害にとどまらず、強いストレスから「うつ症状」を引き起こしやすいことが報告されています1)。そこで、顔の機能改善だけでなく、「心の回復」までをサポートしました。
1. 藤原 圭志:顔面神経麻痺後遺症の治療.Otol Jpn 33 (1): 21-25, 2023 年
施術内容
①解剖学: 顔面神経の走行に沿って鍼を行いました。また、口輪筋や眼輪筋など表情筋の動きを細かく確認しながら鍼を行いました。
②神経心理学:顔面の感覚入力を行いました。
③東洋医学:自律神経を整えるため全身に鍼を行いました。
④カウンセリングを重視しました。そして、心の回復度を測るために、「FaCE Scale(フェイス・スケール)」を用いました。
当院では、顔の動きという「形」の評価だけでなく、患者様が日常生活で感じている「不便さ」や「不安」を客観的に把握するためにFaCE Scaleを活用しています。
1〜8回目(週2回の来院)
口:空気の漏れが少なくなったとのことでした。
「以前より眠れるようになってきました」とのことでした。
9〜16回目(週2回の来院)
目:洗顔の際、目を押さえなくても水が入りにくくなったとのことでした。
口:ハミガキの際、うがいが少しできるようになったとのことでした。
口:食事の際、口の中の食べかすは気にならなくなったとのことでした。
鼻:力が入るようになったとのことでした。
17〜33回目(週2回の来院)
顔面神経麻痺の評価法である柳原法(満点40点):11点から38点まで回復しました。
心の回復度を測るFaCE Scale(満点75点):18点から73点まで回復しました。
目:目を閉じることができるようになったので、シャンプーや洗顔の際、目に水が全く入らなくなったとのことでした。
口:うがいをしても水が漏れなくなったとのことでした。
口:ストローでもペットボトルでも飲めるようになったとのことでした。
顔:発症してから右頬が冷たかったが、左右とも同じくらいの温度になったとのことでした。
「見た目がほとんど気にならなくなって嬉しい」とのことでした。
「大変なことはたくさんあるけど、気づいたら「まあ、いっか」と言っていて、深く考えて落ち込まないようになりました」とのことでした。
【このページの作成者】

豊田英一(とよだえいいち)
【国家資格】
・はり師
・きゅう師
・あんまマッサージ指圧師
【学歴】
・神戸大学大学院修士課程修了(心理学専攻)
【認定資格・終了】
・介護予防指導士
・医療リンパドレナージセラピスト
・感覚統合入門講習会応用コース修了
【所属団体】
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 福岡県鍼灸マッサージ師会
アクセス
JR福間駅から徒歩15分 駐車場:有り 2台


