仕事で少しミスをしただけで、「すべて台無しだ」「完璧じゃない自分には価値がない」と思ってしまうことはありませんか?
心理学では、このような考え方のクセを白黒思考(全か無か思考)と呼びます。
「完璧」か「無価値」か、自分を追い詰める心理
白黒思考とは、物事を「100点か0点か」「白か黒か」の二つでしか考えられなくなることです。
当院でも、仕事で9割うまくいっても、残りの1割のミスが許せず、「結局、意味がなかった」とご自身を責めてしまう方は少なくありません。
少しでも完璧でないと、すべてを否定してしまう。これでは、いつも強いプレッシャーを抱えることになり、うつ病の回復も遅れてしまいます。
発達特性と白黒思考の関係
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達特性のある方は、白黒思考になりやすい傾向があると言われています。
これは性格の問題ではなく、脳の情報の受け取り方や処理のしかたの特徴によるものです。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDの特性のある方は、決まりごとを見つけたり、細かいところを正確にとらえたりすることが得意な一方で、場の空気を読むことや臨機応変な対応のように、はっきりしないこと(グレー)を扱うのが苦手とされています。
そのため、「決まったとおりに完璧にこなさなければ」という思いが強くなりがちで、予定外のことが起きたり、一つでもミスをしたりすると、「もう取り返しがつかない」と混乱したり、強く落ち込んだりしやすくなります。
ADHD(注意欠如・多動症)の場合
ADHDの特性のある方は、興味のあることにはものすごく集中できる(過集中)一方で、そうでないことにはなかなか手がつかないなど、力の配分が極端になりやすいとされています。「とりあえず60点で進める」ことが、難しい場合もあります。
また、感情の波が大きくなることもあり、ミスをしたときのつらい気持ちに飲み込まれて、「自分はいつもダメだ」と、一気に「黒」の結論に飛びついてしまうこともあります。
【心理学】グラデーションでとらえる
白黒思考を和らげるために、心理療法では、物事を「100点か0点か」ではなく、その間の段階でとらえ直す練習を行います。
ステップ①:極端な考え方に気づく(メタ認知)
「すべて台無しだ」と思ったときに、「あ、今、白黒思考になっているな」と、自分の考え方のクセを客観的に見ます。
ステップ②:点数をつけてみる(スケーリング)
「今日の出来は、0点から100点で言うと何点だろう?」と、自分に聞いてみます。
すると、「100点ではないけれど、60点はできている」と、白と黒の間にあるグレーが見えてきます。
ステップ③:「曖昧さ」を受け入れる
「完璧ではないけれど、ここはできた」「今日は60点。それで十分だ」と、グレーのままでよしとします。
これを続けると、物事を一つの見方に決めつけず、しなやかに考えられるようになっていきます。心理学では、この力を認知的柔軟性と呼びます。
世の中のほとんどのことは、白か黒かではなく、その間のグレーでできています。「60点で十分」と自分をとらえ直す練習を少しずつ重ねることが、心の負担を軽くする確実な一歩になります。
※うつ病の治療や服薬は自己判断せず、必ず主治医にご相談ください。当院は医療機関と並行して心身の回復をサポートします。
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担当:豊田英一|鍼灸師・神戸大学大学院修了(心理学専攻)
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ご来院いただける方へ
心理学と鍼灸の両面から心と体の回復を支える、当院のうつ病施術についてご覧ください。
当院の施術例
うつ病につながりやすい考え方のクセ(認知の歪み)が影響しているケースや、その他のうつ病の施術例も併せてご参考になさってください。
オンラインカウンセリング
「すべて自分が悪い」と責めていた女性
休職後、着替えや歯磨きもできず、過去の出来事を何度も思い返しては、自分を責めていました。「落ち込む考え方を変えたい」と、オンラインカウンセリングをご利用になりました。
来院までの経緯
30代 女性 東京都
双極性障害と診断され、心療内科に通院していましたが、3か月前に会社を休職しました。すべてにおいてやる気が起きず、特に朝がつらく、着替えや歯磨きもできない状態でした。
ストレスが溜まると菓子パンなどを過食してしまい、「食べることで精神状態を保っている」とおっしゃっていました。
数年前から、「私は何で苦しいのだろう、悲しいのだろう」と思っていました。
ご本人のお話では、ご主人には自閉スペクトラム症の特性があるとのことでした。夫婦の会話はほとんどなく、娘さんの不登校についても相談できずにいました。
学校の先生やソーシャルワーカーへの相談、親の会への参加など、ひとりで頑張っていました。「カサンドラ症候群なんだろうと思います」とおっしゃっていました。
過去にご主人から言われたことや、仕事でのミスを何度も思い返しては、そのたびに落ち込んでいました。そして、「家族の問題は、すべて自分のせい」と自分を責めていました。
「落ち込む考え方を変えたい」と、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。
初回の心身の評価
- 「すべて自分が悪い」という考え方のクセがみられました。
- 同じことを何度も考えるぐるぐる思考(反芻思考)がありました。
カウンセリングの経過
目的と内容
①考え方のクセを見直す
「家族の問題は、すべて自分のせいだ」のように、うまくいかないことがあると、原因はすべて自分にあると考えてしまいます。
こうした考え方のクセは、心理学で「認知の歪み」と呼ばれます。自分を責めることで、苦しさが強まってしまいます。
このクセの背景には、「自分はダメだ」「自分は能力が低い」と、心の奥に自分を否定する思い込みが隠れていることがあります。
この自己否定的な思い込みがやわらぐと、「すべて自分が悪い」という、自分を苦しめる考え方が変わってきます。
そのためには、自分が何を考え、物事をどう受け止めているのかを、客観的に見ることが大切です。
そこで、カウンセリングでは、考え方のクセだけでなく、心の奥の思い込みも見直していきました。
②心理ワーク
カウンセリングのない日にも、自分の考えに気づき、見つめ直せるように、次のような心理ワークに取り組んでいただきました。
- 同じことをくり返し考えてしまうときに、その考えへの執着をゆるめる
- うまくいかなかったことだけでなく、良かったことにも目を向ける
- ひとつの出来事で、自分という人間まで否定していないかを、客観的に見つめ直す
1~2回目(1か月目)
考え方の変化
嫌なことがあったときに、マイナスな考えが続かないように、「嫌なことはポイっとしている」と話されていました。そうすると、「しょうがないな」と少しは頭を切り替えられるようになったそうです。
ただ、会社に連絡することがあった日は、嫌な過去に引っ張られ、ずっと考え込んでいたとのことでした。
生活の変化
何年ぶりかに、7時間眠れた日があったとのことでした。朝起きて、顔を洗うこともできるようになりました。
ただ、食べることで精神状態を保っているご様子は、まだ続いていました。
院長の見立て
ご自身を客観的に見ようとされていましたが、嫌なことがあると、ぐるぐる思考からまだ抜け出しきれずにいました。
一方で、7時間眠れた日があり、朝に顔を洗えるようにもなりました。こうした変化から、睡眠の状態が少しずつ整い、朝のつらさもやわらいできていると考えています。
3~4回目(2か月目)
考え方の変化
カウンセリングで気持ちを話すうちに、自分が何を考え、どう感じていたのかに気づくことで、「そっか」と納得できることが増え、気持ちが楽になってきたそうです。
会社の同僚から何を言われているかを考えることはあったものの、「考えても仕方ない」と少し思えるようになりました。落ち込む日も少なくなってきたとのことでした。
ただ、まだ波があり、自分ではどうしようもないほどの浮き沈みはあるそうです。
生活の変化
娘さんとランチに行けたり、朝起きて掃除ができたりするようになりました。以前は菓子パンやチョコ、スナック菓子をよく食べていましたが、甘いものをそこまで欲しいとは思わなくなったそうです。
院長の見立て
ご自身を客観的に見られるようになってきたことで、ぐるぐる思考から少しずつ抜け出し、気持ちを落ち着かせられるようになってきたと考えています。
娘さんとランチに出かけるなど、コミュニケーションも増えてきました。こうした経験が、「家族の問題は自分のせい」と責める気持ちをやわらげるきっかけになればと考えています。
5~6回目(3か月目)
考え方の変化
以前は周りに合わせることを何より優先していましたが、今は自分を大切にしようと思えるようになったと話されました。
これまでは「ない」ところばかり見ていたけれど、「ある」ところを見ると幸せだと思えるとのことでした。
娘さんとの関わりの変化
娘さんに対して、もっとできることがあったのにという後悔もありましたが、過去は変えられないと受け止め、今は一緒にゆっくり過ごせているとのことでした。
不登校についても話し合い、娘さんもいろいろ考えていることが分かったと話されました。以前は娘さんが落ち込むと一緒に落ち込んでいましたが、今はしっかり支えていこうと思うようになったとのことでした。
娘さんが学校に行く日も、少しずつ増えてきたと話されました。
また、ご本人の調子が悪い日には、娘さんがご飯を作ってくれたと話されました。
ご主人との関わりの変化
以前は、ご主人が何も言わないことを「無関心で嫌だ」と感じていました。今は「嫌なことも言われず、楽なのかな」と思えるようになり、文句を言わずに働いてくれることにもありがたさを感じていると話されました。
ご主人への口調を柔らかくし、それまでご主人が自分で用意していた朝食も、この方が温かい朝食を作るようになったとのことでした。そうした中で、娘さんの将来についても、ほんの少しですが、ご夫婦で話せるようになってきたと話されました。
また、ご主人は娘さんとは仲がよく、娘さんを介して夕食の希望なども伝えるようになってきたとのことでした。
生活の変化
以前は口に食べ物を放り込むような食べ方をしていましたが、今は過食をしなくなったとのことでした。
インターネットで検索する言葉も、以前の「助けて」「心が苦しい」から、最近は「自分を取り戻す」に変わったと話されました。
今はとても落ち着いているとのことでした。
院長の見立て
今の自分を受け入れる気持ち(自己受容)が生まれたことで、ご主人への見方が変わり、口調や日々の接し方も変わってきたと考えています。こうした変化が、ご夫婦で少しずつ話せるようになるきっかけになったのではないでしょうか。
相手が自分をどう思うか、どう評価するかは、自分ではコントロールできません。でも、自分の考え方や行動は、見直していくことができます。
「もう何も変わらない」「この先もずっと苦しい」と思っていても、同じ状況が、この先も続くと決まっているわけではありません。自分の考え方や行動が変わることで、今の状況も少しずつ変えていけると、私は信じています。
※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。
※経過には個人差があります。
オンラインカウンセリング
小学校教員の燃え尽き症候群|オンラインカウンセリング症例
適応障害やうつ状態による不調を改善して、早く復職したいと、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。
ご相談までの経緯
30代 女性 京都府
適応障害やうつ状態による不調を改善して、早く復職したいと、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。
3年前に心身の不調で約1年間休職し、復職しました。しかし半年前、再び仕事への不安が強くなり、二度目の休職をしました。不安になると涙が出て、首を締めつけられるような感覚や、眠りの不調もありました。
この方は小学生のころ、担任の先生に救われた経験から、自分も悩んでいる子どもを助けられる教師を目指しました。授業の準備にも力を注ぎ、土日も仕事をしていました。
一方、ご自身のお子さんの保育園のお迎えは、いつも時間ぎりぎりになっていました。帰宅後も翌日の授業の準備に追われ、お子さんとゆっくり話す時間が取れずにいました。
初回の心身の評価
お話から、燃え尽き状態にみられる次の2つの特徴がうかがえました。
①情緒的消耗感
仕事に力を注ぎ続け、心のエネルギーが尽きたように感じる状態です。
この方も、授業の準備や子どもたちへの対応で心身の余裕を失い、涙や不眠も重なって、仕事を続けられなくなっていました。
②個人的達成感の低下
仕事での手応えや、自分の働きへの自信を感じにくくなることです。
この方は、ほかの先生と比べて自信を失い、できていることより、足りないところに目が向いていました。
自分を追い込む考え方
「120%で働いていた」と話すほど無理を重ねていました。
仕事のことを考え続けて脳も休まらず(脳疲労)、物事を見る余裕を失っていたと考えました(心理的視野狭窄)。完璧を求める考え方や白黒思考も強まり、自分を追い込んでいることに気づきにくくなっていました。
子ども一人ひとりの傷つきに目を配り、困っている子がいれば、すぐに自分が何とかしなければと思っていました。ほかの先生が子どもにきつく当たることも受け流せず、自分のクラスの子には、そんな思いをさせたくないと考えていました。
子どもたちのためにという思いが強い一方で、ご自身の健康や家族との時間が後回しになっていました。
カウンセリングの経過
目的と内容
オンラインカウンセリングは、2週間に1回(月2回程度)のペースで行いました。
①価値観を見直す
燃え尽きから回復していくためには、自分にとって本当に大切なものは何かを振り返り、これまでの価値観を見直すことも大切です。
そこで、「教師としてどうあるべきか」から少し離れ、「自分はこれから、何を大切にして生きていきたいか」を一緒に考えました。
子どもたちを大切にする気持ちと同じように、自分の心と体、家族との時間も大切にする。そのために、どこまで頑張り、どこから人に頼るのか、仕事との向き合い方を見直していきました。
②考え方のクセと心の奥の思い込みを見直す
この方には、「自分は能力が低いから、人一倍頑張らなければならない」という思い込み(スキーマ)がありました。ほかの先生と比べたり、完璧にできない自分を責めたりして、無理を重ねていました。
そこで、この思い込みを見直し、今の自分を認め、人に頼ることも受け入れられるよう働きかけました。また、子どもたちの気持ちに寄り添いながらも、つらさまで抱え込まない関わり方を考えていきました。
③考え込みに気づく練習
休職中も、頭の中では学校や復職のことを考え続けていました。体を休めていても考え込みが続き、頭も心も休まらない状態だったと考えます。
そこで、自分の考えを客観的に見る力(メタ認知)を養うため、ぐるぐる考えていることに気づき、目の前のことへ注意を戻す練習を、日常の中で重ねていただきました。
2~3月
考え方の変化
不安なときに「まあ、いっか」と思える場面が出て、自分を責めることも減りました。3月には、ぐるぐる考える時間も減り、頭の切り替えができるようになりました。「ありのままの自分で、このまま元気になっていこう」とも話されていました。
休めたと感じられるようになったのも、このころです。それまでは苦しくても「なんでだろう、なんでだろう」と考え続けていましたが、「立ち止まった気がする。それがよかったのかな」と振り返っていました。
これまで比べていた、同年代で子育てをしながら教え方も仕事の進め方も上手な先生を、お手本にしようと思えるようになりました。
休職中はほかの仕事も探していましたが、学校への不安がなくなり、子どもたちに伝えたいことが増えていきました。「自分が救われたように、子どもたちの役に立ちたい」という思いをいちばんかなえられるのは小学校の教師だと気づき、「続けていきたい」と話されていました。
生活の変化
3月には泣くことはなくなり、食欲も戻って、体も元気になってきました。本の内容も頭に入るようになりました。
地域のバドミントンサークルで欠員が出て頼まれたときは、お子さんの保育園行事と重なっていたため、以前なら引き受けていたところを断り、保育園行事に参加しました。「今までの自分とは違う」と感じたそうです。
院長の見立て
比べていた先生をお手本にできたことも、狭くなっていた視野が広がってきた表れだと考えられます。
「立ち止まった気がする」という言葉からも、ぐるぐる考え続ける状態から抜け出し、自分を客観的に見られるようになってきたことがうかがえます。
また、頼まれごとを断り、お子さんの行事を選べたことには、価値観の変化が表れています。周りの人を優先する「他人軸」から、自分が何を大切にしたいかで選ぶ「自分軸」へ、少しずつ変わってきたと考えられます。
4月
考え方の変化
落ち込むことが減り、マイナスの考えに入り込んでも早く気づいて抜け出せるようになったそうです。
以前は、クラスの子どもたちを一人も取りこぼさないよう、自分が頑張らなければと思っていました。子どもたちへの関わり方についても、子どもたち自身が取り組む力を信じ、必要なときに支えながら見守ることも大切だと考えるようになったそうです。
家庭での変化
家庭でも、きちんとした母親でいなければという思いがありました。
お子さんのお友達が遊びに来ると、以前は、家をきれいにしておかなければ、遊んであげなければと思い、それが負担だったそうです。今は、無理をせず、自然な自分でいることも大事だと思えるようになりました。
夕食作りがつらい日も無理をしていましたが、ピザなどで済ませてよいと考えられるようになりました。
院長の見立て
教師としても母親としても、すべてを自分が背負わなければという考え方がやわらいできたと考えられます。
子どもたちや家族を大切にしながら、自分の疲れや気持ちにも目を向け、今の自分にできる形で関われるようになってきました。「きちんとできない自分はダメだ」と責めず、自然な自分を認められる場面が増えてきたと感じています。
6月
考え方と働き方の変化
6月に復職しました。
復職直後は、帰宅後や夜から翌朝にかけて再び不安が強まり、涙が出ることがありました。翌日の段取りや授業を何度も考え、「ちゃんとできるだろうか」と不安になったり、理想どおりにできない自分にもどかしさを感じたりしていました。
そのような中でも、「学校でも私自身でいよう」と、自然体でいることを意識していました。
次第に、ほかの先生からどう思われるかが気にならなくなり、自分がよいと思う授業にシンプルに取り組めるようになりました。
子どもたちが気持ちよく勉強できる空間をつくりたいと思い、子どもたちのよい変化に充実感を感じているそうです。
一度目の復職では、完璧にしようとすべて自分で抱えていましたが、今回は人にお願いできるようになったと振り返っていました。
力を抜いて働くことに抵抗を感じることもありますが、できないことは仕方ないと考え、「自分ができる範囲で、一生懸命やろう」と思えるようになってきました。
院長の見立て
人に頼れるようになったことは、完璧でなければダメだという考え方がやわらぎ、今の自分を受け入れられるようになってきた表れだと考えられます。
力を抜くことへの抵抗は残っていますが、今の自分にできることを認め、自分なりのやり方で子どもたちに関わろうとされています。
教師になった原点を再確認し、ご家族も大切にしながら仕事を続けていく。価値観を見つめ直し、自分を責めすぎずに働こうと思えるようになったことが、この方の大きな変化だと考えられます。
※経過には個人差があります。
施術例
「薬だけでなく考え方から変えたい」
うつ病・適応障害での3度目の休職から復職へ
プロジェクトが重なる激務から燃え尽き、深刻な無気力状態へ。「頭がぼーっとして言葉が出ない」「家族の前でも笑えない」と限界まで追い詰められていました。
来院までの経緯
2ヶ月前に心療内科で「うつ病」「適応障害」と診断され、休職に入られました。休職は一昨年から毎年続いており、今回が3回目とのことでした。
日常的な残業に加え、通常は年1回の大型プロジェクトが複数回重なる激務が続き、仕事のピークを過ぎた頃から深刻な無気力状態に陥っていました。
休職の半年前からは、不眠や食欲不振をはじめ、「頭がぼーっとして仕事が手につかない」「言葉が上手く出ない」といった心身のサインが続いていたそうです。
ご家庭でも、奥様やお子様との会話で自然に笑うことができなくなり、休日は気分の落ち込みを紛らわせるために昼間から飲酒をして過ごす日もありました。
これまでは病院での服薬治療で復職されていましたが、「もう休職を繰り返したくない。薬だけでなく、自分自身の考え方から変えたい」との思いで当院へご相談にいらっしゃいました。
初回来院時の心身の評価
心身の状態(バーンアウト)
無気力状態に陥っており、いわゆる「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の傾向がみられました。
仕事に対する考え方(考え方のクセ)
「チームの中で、質の高い仕事をしなければならない」という非常に強い責任感をお持ちでした。
また、「人に頼ると自分の評価や価値が下がる」という思い込みから、困っていても周囲にSOSを出せず、一人で全てを抱え込んでしまう傾向(過剰な自己関連付け)がありました。
東洋医学的な体質評価
東洋医学の観点では、全身のエネルギーが枯渇した「気虚(ききょ)タイプ」の状態でした。精神的・身体的ともに疲労が蓄積し、ご自身の力だけでは回復の活力が湧きにくい状態でした。
鍼灸施術の経過
燃え尽きのループから脱出し、休職を繰り返さないためには、ご自身の思考や感情を客観的に観察し、これまでの仕事に対する価値観をアップデートすることが鍵となります。
施術目的
①「本当に大事なものは何か」に気づく(価値観の再構築)
本来、仕事は自分や家族が幸せになるための「手段」であるはずが、自分を犠牲にしてでもやり遂げなければならない「目的」にすり替わっていました。この逆転に気づき、アイデンティティを再構築することを第一の目的としました。
②自分の状態を客観的に見る(メタ認知の向上)
長期間のストレスで心に余裕がなくなると、物事の見方が極端に狭くなり(心理的視野狭窄)、限界を迎えるまで頑張り続けてしまいます。自分の状況を冷静に見つめ直す「メタ認知」を養うことを目的としました。
③家族とのコミュニケーション(自尊心の回復)
度重なる休職により、「自分を大切にする気持ち(自尊心)」が低下していました。特に重要な他者である奥様とのコミュニケーションを密に図るよう促し、安心できる居場所の中で自尊心を回復させることを目指しました。
施術内容
鍼灸施術(心身の緊張緩和):
東洋医学のアプローチで自律神経のバランスを整え、気虚状態を改善し、回復のための土台となるエネルギーを養います。
カウンセリング(自分基準の構築):
人生の振り返りを行い、他人の評価に依存しない「自分基準」の価値観を構築します。
心理学ワーク(客観視の練習):
自分の思考や感情を客観的に捉える「メタ認知能力」の向上を目指したワークを実施しました。
1〜4回目(週1回の来院)
行動とコミュニケーションの変化
今までしたことがなかった「家族の朝食作り」を毎日続けるようになりました。
自分の感情を表現することが苦手でしたが、奥様からのご提案もあり「今日あったこと、感じたこと」を話すようになりました。
また、「できないことはできないと周囲に伝えることも大切だと気づいた」と、人に頼ることへの抵抗感が少しずつ薄れてきました。この時期はまだ「早く復帰しなくては」という焦りもみられました。
5〜10回目(週1回の来院)
考え方の変化と心身の回復
低下していた集中力が戻り、本の内容が頭に入るようになってきました。
奥様からも「笑うようになって、表情が変わってきたね」と声をかけられたそうです。
睡眠の質も向上し、早く目が覚めても「ラッキーだ」と、物事を柔軟に考えられるようになってきました。
「一番大事なのは家族。今まで無理をして残業していたけれど、会社からの評価はそこまで気にしなくてもいいと思えるようになった」と、価値観の大きな変化がみられました。
現在(月1回のメンテナンス)
復職と再発防止の定着
無事に復職を果たされました。
「今までは限界を超えてオーバーフローを起こしていたので、今はあえて8割の力で仕事をするよう心がけている」と、ご自身でセルフコントロール(再発防止)を実践されています。
睡眠も安定し、頭もスッキリしているとのことです。
毎日帰宅後に奥様と仕事の話をし、休日はお子様のサッカーに参加されるなど、日焼けした笑顔でお越しいただいています。
※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。
※経過には個人差があります。
【心理学】うつ病になりやすい考え方とは?
ここで紹介する考え方のクセは、うつ病になりやすくするだけでなく、回復も妨げてしまいます。
▶「完璧じゃない自分は無価値」うつ病の回復を妨げる「白黒思考」
▶「悪いことしか起きない」うつ病の回復を妨げる「心のフィルター」
▶「お世辞に違いない」うつ病の回復を妨げる「マイナス化思考」
▶「迷惑だと思われている」うつ病の回復を妨げる「心の読みすぎ」
▶「どうせうまくいかない」うつ病の回復を妨げる「先読みの誤り」
【このページの作成者】

豊田英一(とよだえいいち)
【国家資格】
・はり師
・きゅう師
・あんまマッサージ指圧師
【学歴】
・神戸大学大学院修士課程修了(心理学専攻)
【著書】
「考え方を変えたいのに、変えられない」
【認定資格・修了】
・介護予防指導士
・医療リンパドレナージセラピスト
・感覚統合入門講習会応用コース修了
【所属団体】
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 福岡県鍼灸マッサージ師会
アクセス
JR福間駅から徒歩15分 駐車場:有り 2台
