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休むのが怖い…うつ病の回復を妨げる「すべき思考」の呪縛とは

一番大切なのは「休むこと」だと頭ではわかっていても、「社会人として働く『べき』だ」「こんなことで休む『べき』ではない」と自分を追い込んでいませんか?

心理学(認知行動療法)では、このような考え方のクセを「すべき思考」と呼びます。これは、うつ状態にある方に非常に多く見られる認知の歪み(偏った考え方)の一つです。

なぜ、休むことに「罪悪感」を抱いてしまうのか?

「すべき思考」とは、「〜すべき」「〜しなければならない」という強い義務感で、自分や他人を厳しく律してしまう状態です。

当院にご相談に来られる方の中にも、この「すべき」という呪縛から逃れられず、休んでいる間も罪悪感で心身が休まらないという方が多くいらっしゃいます。

この厳しすぎるマイルールから少しでも外れると、激しい自己嫌悪に陥り、心に回復のためのエネルギーが全く貯まらなくなってしまうのです。

【心理学のヒント】「絶対」を「願望」に変える

この苦しい呪縛を解き、心から安心して休めるようになるために、心理療法では自分を縛る言葉(ルール)を少しずつ緩めるアプローチを行います。

ステップ①:「すべき」という言葉に気づく

まずは、自分の頭の中に「働くべきだ」「早く治すべきだ」という言葉が浮かんだ時、「あ、今自分は『すべき思考』で自分を追い詰めているな」と客観的に気づくメタ認知)ことが第一歩です。

ステップ②:言葉の語尾を「緩める」

「〜すべき」という強い言葉に気づいたら、それを意識的に柔らかい言葉へ変換してみます。例えば、「働くべきだ」を「働けたらいいな」「働くに越したことはないけれど、今は休もう」と、「絶対の義務」から「願望」へと置き換えます。これを心理学では認知再構成法と呼びます。

ステップ③:「休むこと」にOKを出す(自己受容)

言葉のハードルを下げたら、最後に「今は休むことが、私の一番の仕事なんだ」と自分に許可を出してあげてください。できない自分を責めるのではなく、ありのままを受け入れる(自己受容)練習です。

「すべき」という重い鎧を少しずつ脱ぎ捨て、自分に対するハードルを下げてあげることが、うつ病の回復への一番の近道になります。

※うつ病の治療や服薬は自己判断せず、必ず主治医にご相談ください。当院は医療機関と並行して心身の回復をサポートします。


当院から

考え方を少し見直すだけでも、心は軽くなります。

おひとりでは難しいと感じた場合は、ご来院による施術とオンラインカウンセリングをご用意しています。

ご来院いただける方へ

心理学と鍼灸の両面から心と体の回復を支える、当院のうつ病施術についてご覧ください。

ご来院が難しい方へ

県外など遠方にお住まいの方や、体調のため外出が難しい方には、全国対応のオンラインカウンセリングもあります。

薬や休養だけでなく、考え方のクセも変えたい方におすすめです。

当院の施術例

うつ病につながりやすい考え方のクセ(認知の歪み)が影響しているケースや、その他のうつ病の施術例も併せてご参考になさってください。

施術例

常に最悪を考えてしまう不安
(全般性不安障害)と更年期不調

50代 女性 鞍手郡

仕事や家族へのマイナス思考が止まらず、一日中続く極度の緊張と不眠。「またうつで入院するかもしれない」と限界を迎えてご来院されました。

施術例の全文を読む

来院までの経緯

50代 女性 鞍手郡

数カ月前から、更年期症状に加えて、極度の不安感が続いていました。マイナス思考の傾向が強く、家族や仕事のことが常に心配で眠ることができず、一日中緊張状態が続いていました。

例えば、
「上司に嫌われているので、クビになるかもしれない」
「娘が大学に合格できないかもしれない」
「明日、地震が来るかもしれない」
など、不安が次々に浮かんでくる状態でした。

婦人科でホルモン補充療法や漢方を服用しても症状の変化を感じにくく、心療内科では「全般性不安障害」と診断されました。過去に「うつ病」と診断され、精神科病院に入院した経験もありました。

最近は食欲がなく、落ち込みが激しくて、いつ笑ったかも覚えていない状態でした。

「このままでは、また入院になってしまう」と不安になり、ご来院くださいました。

初回来院時のお悩み

  • 仕事を辞めたくない
  • 娘の進路が心配
  • 感情を安定させたい
  • マイナス思考を変えたい
  • 食欲がない
  • 喉のつまり感
  • 不眠、頭痛、疲労感

初回来院時の心身の評価

過去に解雇されてうつ病で入院した経験があり、解雇への恐れが強くなっていました。

不安の内容は多岐にわたり、現実的な可能性が低いことまで「起こるかもしれない」と感じて心配していました。

東洋医学では「陰虚タイプ」の傾向がみられ、ストレスや過労で全身のうるおいが不足しやすい状態でした。

「思い悩み」の感情が強くみられました。

鍼灸施術の経過

施術目的

全般性不安障害では、日常のささいなことにも強い不安を感じやすくなります。

その背景のひとつとして、「失敗するかもしれない」など、物事を悪い方向に考えてしまうクセ(認知の歪み)が関与することがあります。こうした偏った考え方は、不安を強めるだけでなく、抑うつ状態につながることもあります。

大切なのは、不安が現実的なものかどうかを冷静に見直し、「必要以上に心配しすぎていないか」に気づくことです。

カウンセリングでは、このような偏った考え方を少しずつ修正していくサポートを行いました。

また、将来のことを考えるほど不安が強まりやすいため、「今この瞬間の自分」に意識を向けることも重視しました。

施術内容

①「精神の安定」を目的とした鍼灸施術
「精神の安定」を目的とした鍼灸施術を行いました。

② 不安の軽減やマイナス思考の見直しを目的としたカウンセリング
不安の軽減やマイナス思考の見直しを目的としたカウンセリングを行いました。

1~4回目(週1回の来院)

「寝つきが良くなり、数日間は睡眠薬を飲んでいない」とのお話がありました。

空腹を感じられるようになり、食欲も出てきたご様子でした。喉のつまり感も減ってきたとのことでした。

この方は過去の解雇経験から解雇への恐れが強まり、現在は「上司に嫌われている」という思い込みから不安が広がっていました。

その思い込みの現実性を見直すため、上司とのコミュニケーションの必要性をお伝えし、面談を申し込むことを提案しました。

上司との面談を通じて、「嫌われている」というのは思い込みだったと気づくことができました。実際には上司が「最近、元気がない」と心配してくれていたことも分かったそうです。

5~8回(週1回の来院)

睡眠薬がなくても自然に眠れる日が増え、「朝からきつい」が減って、仕事や家事をこなせるようになってきたとのことでした。

考え方も前向きになってきたご様子でした。何かあっても、できるだけ「なるようになる」と意識して捉えるようにしているそうです。

9~11回(週1回の来院)

これまで出ていた自律神経症状は大きく軽減し、元気を取り戻した実感が出てきたとのことでした。

「こんなに調子の良い日が続くとすごく嬉しい」とのお話がありました。

仕事や家庭での時間を楽しめるようになり、「よく笑うようになった」とおっしゃいました。

不安に感じることがあっても、「なるようになる」と受け流せるようになってきたとのことでした。

現在

メンテナンスのため、月1回ほどのペースで来院。

職場ではお客様から、「元気がいいね!」と声をかけられることもあるそうです。

※服薬の変更は、主治医と相談しながら進めることが大切です。

※経過には個人差があります。

施術例

「薬だけでなく考え方から変えたい」
うつ病・適応障害での3度目の休職から復職へ

40代 男性 糟屋郡

プロジェクトが重なる激務から燃え尽き、深刻な無気力状態へ。「頭がぼーっとして言葉が出ない」「家族の前でも笑えない」と限界まで追い詰められていました。

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来院までの経緯

2ヶ月前に心療内科で「うつ病」「適応障害」と診断され、休職に入られました。休職は一昨年から毎年続いており、今回が3回目とのことでした。

日常的な残業に加え、通常は年1回の大型プロジェクトが複数回重なる激務が続き、仕事のピークを過ぎた頃から深刻な無気力状態に陥っていました。

休職の半年前からは、不眠や食欲不振をはじめ、「頭がぼーっとして仕事が手につかない」「言葉が上手く出ない」といった心身のサインが続いていたそうです。

ご家庭でも、奥様やお子様との会話で自然に笑うことができなくなり、休日は気分の落ち込みを紛らわせるために昼間から飲酒をして過ごす日もありました。

これまでは病院での服薬治療で復職されていましたが、「もう休職を繰り返したくない。薬だけでなく、自分自身の考え方から変えたい」との思いで当院へご相談にいらっしゃいました。

初回来院時の心身の評価

心身の状態(バーンアウト)
無気力状態に陥っており、いわゆる「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の傾向がみられました。

仕事に対する考え方(考え方のクセ)
「チームの中で、質の高い仕事をしなければならない」という非常に強い責任感をお持ちでした。

また、「人に頼ると自分の評価や価値が下がる」という思い込みから、困っていても周囲にSOSを出せず、一人で全てを抱え込んでしまう傾向(過剰な自己関連付け)がありました。

東洋医学的な体質評価
東洋医学の観点では、全身のエネルギーが枯渇した「気虚(ききょ)タイプ」の状態でした。精神的・身体的ともに疲労が蓄積し、ご自身の力だけでは回復の活力が湧きにくい状態でした。

鍼灸施術の経過

燃え尽きのループから脱出し、休職を繰り返さないためには、ご自身の思考や感情を客観的に観察し、これまでの仕事に対する価値観をアップデートすることが鍵となります。

施術目的

①「本当に大事なものは何か」に気づく(価値観の再構築)
本来、仕事は自分や家族が幸せになるための「手段」であるはずが、自分を犠牲にしてでもやり遂げなければならない「目的」にすり替わっていました。この逆転に気づき、アイデンティティを再構築することを第一の目的としました。

②自分の状態を客観的に見る(メタ認知の向上)
長期間のストレスで心に余裕がなくなると、物事の見方が極端に狭くなり(心理的視野狭窄)、限界を迎えるまで頑張り続けてしまいます。自分の状況を冷静に見つめ直す「メタ認知」を養うことを目的としました。

③家族とのコミュニケーション(自尊心の回復)
度重なる休職により、「自分を大切にする気持ち(自尊心)」が低下していました。特に重要な他者である奥様とのコミュニケーションを密に図るよう促し、安心できる居場所の中で自尊心を回復させることを目指しました。

施術内容

鍼灸施術(心身の緊張緩和):
東洋医学のアプローチで自律神経のバランスを整え、気虚状態を改善し、回復のための土台となるエネルギーを養います。

カウンセリング(自分基準の構築):
人生の振り返りを行い、他人の評価に依存しない「自分基準」の価値観を構築します。

心理学ワーク(客観視の練習):
自分の思考や感情を客観的に捉える「メタ認知能力」の向上を目指したワークを実施しました。

1〜4回目(週1回の来院)

行動とコミュニケーションの変化
今までしたことがなかった「家族の朝食作り」を毎日続けるようになりました。

自分の感情を表現することが苦手でしたが、奥様からのご提案もあり「今日あったこと、感じたこと」を話すようになりました。

また、「できないことはできないと周囲に伝えることも大切だと気づいた」と、人に頼ることへの抵抗感が少しずつ薄れてきました。この時期はまだ「早く復帰しなくては」という焦りもみられました。

5〜10回目(週1回の来院)

考え方の変化と心身の回復
低下していた集中力が戻り、本の内容が頭に入るようになってきました。

奥様からも「笑うようになって、表情が変わってきたね」と声をかけられたそうです。

睡眠の質も向上し、早く目が覚めても「ラッキーだ」と、物事を柔軟に考えられるようになってきました。

「一番大事なのは家族。今まで無理をして残業していたけれど、会社からの評価はそこまで気にしなくてもいいと思えるようになった」と、価値観の大きな変化がみられました。

現在(月1回のメンテナンス)

復職と再発防止の定着
無事に復職を果たされました。

「今までは限界を超えてオーバーフローを起こしていたので、今はあえて8割の力で仕事をするよう心がけている」と、ご自身でセルフコントロール(再発防止)を実践されています。

睡眠も安定し、頭もスッキリしているとのことです。

毎日帰宅後に奥様と仕事の話をし、休日はお子様のサッカーに参加されるなど、日焼けした笑顔でお越しいただいています。

※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。

※経過には個人差があります。

施術例

「自分には何もない」
自分の価値を見失い、うつ症状に苦しんだ日々

60代 女性 福津市

病院で異常なし。「自分には何もない」という自己喪失感から、朝の激しい吐き気や震え、強い不安感に悩まれてのご相談です。

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来院までの経緯

2カ月前から、急に身体と心に不快な症状が現れるようになりました。毎朝、吐き気がひどく、食べる気力がなくなり、体重が大幅に減りました。

1日に数回、強い不安感に襲われ、動悸が激しくなり、手が震えて止まらない状態でした。肩から胸にかけてぞわぞわした感じがして、足の力が入らなくなることもありました。ネガティブなことや自己否定的な考えにとらわれ、気持ちが沈んでいきました。

毎日、「あれもしなければならない、これもしなければならない」と焦りはあるものの、体が重くてなかなか行動に移せず、常にイライラしていました。

最初は単なる疲れだと思っていたようですが、病院を受診しても大きな異常は見つからず、「少しでも楽になりたい」と思い、当院にご来院くださいました。

初回来院時のお悩み

① 不安感が解消できない
不安感が日常的に強く、どうしても解消できないことに苦しんでいました。

② ネガティブな思考が頭から離れない
ネガティブな思考が頭から離れず、何とか振り払いたいという思いが強くありました。

③ 朝の吐き気や倦怠感が強い
朝の吐き気や倦怠感がひどく、身体が重く感じられることで、日々の生活に支障をきたしていました。

初回来院時の心身の評価

① 自己喪失感が強い状態でした
「本当の自分が分からない」といった内容を繰り返し話されていました。自分の存在に対する確信を持てず、自己喪失感(アイデンティティの危機)で苦しんでいるご様子でした。

② 自己価値感の低下が強くうかがえました
「仕事をしていない」「子供がいない」「自分には何もない」と、欠落感に焦点を当てて話されていました。自己価値感の低下が強くうかがえました。

③ 自己否定感と焦りがみられました
自己否定感が強く、常に何かに焦っている様子がありました。その焦りが無意識に心身へ負担をかけていると推測されました。

④ 東洋医学的には「陰虚タイプ」の傾向がみられました
東洋医学的には「陰虚タイプ」の傾向がみられ、過度のストレスや疲労によって身体の潤いが不足しやすい状態でした。このような状態は心身の不調につながる要因の一つになり得ます。

⑤ 抑え込まれていた怒りが出やすい状態でした
感情面では、抑え込まれていた「怒り」が強く出やすい状態がみられ、それが自己否定感や焦りと結びついている可能性がありました。

鍼灸施術の経過

施術目的

施術の目的は、「本当の自分がわからない」「自分の価値を見失っている」といった自己喪失感を和らげていくことでした。

こうした状態では、生きる意味や自分の価値が揺らぎ、日々の生活や将来に対する不安が強くなることがあります。

そのため、自己受容を高め、「今の自分でいい」と実感できる感覚を育てていくことを目指して施術を行いました。

自分を受け入れ、現状の自分にも価値があると感じられるようになることで、内面的な安定感が育ち、心身の不調も落ち着きやすくなります。

さらに、「残りの人生をどのように生きていくか」を少しずつ整理し、焦りや不安感を和らげながら、方向性を見つけていくことも重視しました。

施術内容

① 自律神経のバランスを整える鍼灸施術
心身の緊張を和らげ、落ち着きを取り戻しやすくすることを目的に鍼灸施術を行いました。

アイデンティティの再構築と自己受容感を高めるカウンセリング
「自分の価値を見失っている」という感覚に対して、捉え方を整理し、現在の自分を受容的に捉えられるようサポートしました。

③ 感情の波を整えるセルフケア
焦りや自己否定感が強くなったときに、落ち着きを取り戻すためのセルフケアをお伝えしました。

1~4回目(週1回の来院)

施術を始めてから、徐々に変化が見られました。朝の吐き気が少し和らぎ、食欲も戻ってきたとのことでした。

夜間の睡眠も少しずつ深くなり、以前より休養感が得られるようになってきたとのことでした。

一方で、不安感やイライラ感はまだ残り、情緒が不安定な状態が続いていたため、心のケアも引き続き重視しました。焦らず少しずつ自己肯定感を育て、感情の波に対処できる力を整えていくことを大切にしました。

5~8回目(週1回の来院)

施術を続ける中で、頭が軽くなり、ネガティブな考えが以前より少なくなってきたとのことでした。

朝から動きやすい日が増え、身体面のエネルギーが回復してきている感覚も出てきたとのことでした。

また、新しいことに挑戦したいという前向きな気持ちが強くなってきたご様子でした。ただ、「本当にできるだろうか」と不安が出る場面もありましたが、回復の過程として自然な反応であるため、少しずつ自信につなげていけるようサポートを続けました。

9~10回目(月2回の来院)

自律神経症状は全体として落ち着き、不安な気持ちが湧いたときも、プールで身体を動かすことで和らぎやすくなったとのことでした。心身のバランスが整ってきたご様子でした。

また、以前は「自分には何もない」と感じていたところが、今では「そんな自分でいい」と思える場面が増え、落ち込みが続くことが減ってきたご様子でした。

自己受容が進み、自分を大切にする感覚が育ったことで、心の安定につながっている様子がうかがえました。

現在

メンテナンスのため、月に1回のペースで来院。

英語の教師や通訳をしていた経験を活かし、翻訳の仕事につなげるために通信講座で勉強中です。

※通院に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。

※経過には個人差があります。

施術例

8年のひきこもり。
「働けない自分」を責めたうつ・適応障害

40代 男性 福津市

うつ病を発症し、適応障害から8年のひきこもりに。「親に申し訳ない」と毎日自分を責め続け、将来への強い不安で心身ともに限界の状態でご来院されました。

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来院までの経緯

約10年前、うつ病を発症しながらも看護師として勤務を続けていましたが、その後「適応障害」と診断され、やむを得ず退職されました。

その後は実家に戻り、異なる職種での再就職を試みましたが、不安感や人間関係の問題から退職を繰り返し、最終的には約8年間、仕事に就けない状態が続いていました。

日々、過去の出来事を振り返っては失敗や後悔に苛まれ、「あの時こうしていれば…」と自分を責めることが多く、将来への強い不安も抱えていました。

親への申し訳なさから「何とかして仕事を再開しなければ」という思いが募る一方、働けない自分をさらに責める悪循環に陥っていました。

心療内科やカウンセリングにも通いましたが、十分な変化を実感できず、次第に一日中ふさぎ込むようになり、食事もままならず、睡眠も取れない日が続いていました。

そうした中で、当院にご相談いただくこととなりました。

初回来院時のお悩み

社会復帰して親への感謝を形にしたい思いは強い一方、その一歩を踏み出す不安が大きく、行動に移せない状況でした。

寝つきの悪さや夜中の中途覚醒が頻繁に起こり、心身の休養が十分に取れない状態が続いていました。

気持ちが落ち込むと立て直せず、数週間にわたり部屋から出られないこともあり、日常生活の維持が困難になっていました。

「ぐるぐる思考(反芻思考)」が止まらず、ネガティブな考えに頭が支配される恐怖感があり、それが就職活動の一歩を踏み出す妨げとなっていました。家族との会話はほとんどなく、この状態が数年間続いていました。

初回来院時の心身の評価

過去への後悔と将来への不安が強い
過去の出来事を振り返って「もっとこうすればよかった」という後悔が強く、将来に対しても常に不安を抱えている状態でした。

自己否定感が強い
自分に対して非常に厳しく、「自分はだめだ」という自己否定的な思考が目立ち、心理的な負担をさらに大きくしていました。

自尊心の低下
自分を大切にする感覚や「達成できる」という自信が乏しく、自尊心が低下していました。これが社会復帰への一歩をためらわせる要因となっていました。

東洋医学的体質評価:気虚タイプ
東洋医学的には「気虚タイプ」の傾向がみられました。全身のエネルギー(気)が不足しやすく、精神的・身体的に疲れやすい状態で、元気や活力が湧きにくいご様子でした。

鍼灸施術の経過

施術目的

心理学では、社会とのつながりが、自尊心の土台になりやすいと考えられています(社会的アイデンティティ)。

自尊心とは、自分を大切にし、自分の価値を実感できる感覚です。

この方は、長期のひきこもりにより社会とのつながりが途絶え、社会的アイデンティティが弱まり、自尊心が大きく低下している状態でした。さらに、過去への後悔や将来への不安が重なり、前向きな行動が難しくなっていました。

そこで当院では、鍼灸とカウンセリングを組み合わせながら、

  1. 「今」に意識を向けて心身の安定を整える
  2. 最も身近な社会的つながり(家族)から再構築する
  3. 小さな外部接点(ハローワーク等)を経て、社会的アイデンティティを回復していく

という順序を重視しました。

まずはお母様との日常的な会話やふれあいを増やし、安心感を取り戻すところから開始しました。そのうえで、外部との接点を段階的に増やし、「社会の中での自分」を取り戻していくことを目指して施術を行いました。

施術内容

① 心身の緊張を和らげる鍼灸施術
自律神経のバランスを整えることを目的に、過度な緊張が抜けやすくなるよう施術を行いました。

② 「今の自分を受け入れる」カウンセリング
過去の後悔や将来不安に引っぱられやすい状態だったため、「今の自分を受け入れる」ことをテーマに整理しました。

③ 捉え方の幅を広げる心理学的ワーク
ネガティブな思考一色になりやすい場面で、見方の選択肢を増やすワークを実施しました。

④ 感情の波に対処するセルフケア指導
深呼吸、リラックス法、マインドフルネス等を用い、不安や落ち込みが強まった際に落ち着きを取り戻す方法を練習しました。

1~7回目(週1回の来院)

睡眠の質が向上し、目覚めが以前よりすっきりする日が増えてきました。深い疲労感やだるさも軽減してきたとのことでした。

セルフケアの継続により、過去のことを考える時間が減り、後悔やネガティブ思考に支配される頻度が少なくなってきたとのことでした。

一方で、落ち込むと自己否定に陥りやすい課題は残っていましたが、感情の波への対処は少しずつ整ってきたご様子でした。

また、「親に感謝しているが、うまく伝えられない」という点についても、言葉にするための自信と安心感を育てていく段階でした。

8~12回目(週1回の来院)

以前は激しい落ち込みが続き、1週間ほど寝込むこともありましたが、現在は2日ほどで回復できる場面が増えてきたとのことでした。

「働こう」という意欲が芽生え、ハローワークへ足を運ぶ行動も見られました。応募にはまだ踏み出せていませんでしたが、社会との接点を作る一歩として大きな進展でした。

また、母親に感謝の言葉を伝えられるようになり、親子関係にも変化が見られたとのことでした。家族という最も身近な社会的つながりが回復することで、安心感と自尊心の土台が育ってきたご様子でした。

13~20回目(週1回の来院)

強い落ち込みや不安感は減り、前向きな捉え方ができる場面が増えてきたとのことでした。

就職に有利な資格を取得するという具体的な成果も得られ、自信につながっていったとのことでした。これは「できる自分」という実感が、社会的アイデンティティの回復を後押ししている状態でした。

また、母親との関係もさらに改善し、互いの思いを言葉にできる場面が増えたとのことでした。

21~25回目(週1回の来院)

ハローワークで資料を集める中で、希望する会社が絞れてきました。応募の準備が整い、実際に行動を起こせたことは大きな一歩でした。

落ち込むこともほぼなくなったとのことでした。

会社見学や複数企業への応募など、自分に合った職場を探す積極的な行動を起こされたとのことでした。

さらに、両親だけでなく疎遠だった姉たちとも会話ができるようになり、家族・周囲とのつながりが広がっていったとのことでした。

現在

就職が決まり、新しい職場で働いてるとのことです。

家族・社会とのつながりが段階的に回復し、「社会の中での自分」という感覚(社会的アイデンティティ)が育つにつれて、自尊心も支えられていったと考えられます。

※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。

※経過には個人差があります。

【このページの作成者】

自律神経専門の鍼灸院「鍼灸指圧豊田治療院」院長、豊田英一の写真

豊田英一(とよだえいいち)

【国家資格】
・はり師
・きゅう師
・あんまマッサージ指圧師

【学歴】
・神戸大学大学院修士課程修了(心理学専攻)

【認定資格・修了】
介護予防指導士
医療リンパドレナージセラピスト
感覚統合入門講習会応用コース修了

【所属団体】
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 福岡県鍼灸マッサージ師会 

アクセス

JR福間駅から徒歩15分 駐車場:有り 2台

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