「ちゃんとしなければ」「人に迷惑をかけるべきではない」「これくらいできて当然だ」と、いつも心の中で自分に言い聞かせていませんか?
心理学では、このような考え方のクセを「すべき思考」と呼びます。うつ病の方に、とても多く見られます。
なぜ、できないことに「罪悪感」を抱くのか?
すべき思考とは、「〜すべき」「〜しなければならない」という自分の中のルールで、自分や他人を厳しく縛ってしまうことです。
問題なのは、ルールそのものではありません。「必ず守るもの」と、絶対のものにしてしまうことです。でも現実は、ルールどおりにはいきません。体調が悪い日もあれば、思うように進まない日もあります。
それでもルールを守ろうとしていると、守れないたびに罪悪感を抱き、自己嫌悪におちいります。これでは、回復に必要なエネルギーがいつまでもたまりません。
当院にご相談に来られる方の中にも、休んでいるときでさえ「こんなことで休むべきではない」と自分を責めてしまう方が多くいらっしゃいます。
【心理学】「絶対」を「願望」に変える
この苦しさを和らげるために、心理療法では、自分を縛る言葉を少しずつ緩めていきます。
ステップ①:「すべき」という言葉に気づく
「ちゃんとしなければ」「早く治すべきだ」といった言葉が頭に浮かんだとき、「あ、今『すべき』が出てきたな」と客観的に気づくことが第一歩です。
ステップ②:言葉の語尾を「緩める」
こうした言葉に気づいたら、語尾を緩めてみます。たとえば「ちゃんとしなければ」を「ちゃんとできたらいいな」に、「人に迷惑をかけるべきではない」を「迷惑をかけないに越したことはないけれど、頼ってもいい」に変えます。
このように、「絶対にこうしなければ」という義務を、「こうできたらいいな」という願望に置きかえていきます。心理学では、こうした考え方のとらえ直しを「認知再構成法」と呼びます。
ステップ③:「できない自分」にOKを出す(自己受容)
語尾を緩められたら、最後に「今はここまでできれば十分だ」と、自分に許可を出してください。思いどおりにできないことを責めるのではなく、今のありのままの自分を受け入れる練習です。
「すべき」を少しずつ緩め、自分へのハードルを下げていくことが、うつ病の回復への一番の近道になります。
※うつ病の治療や服薬は自己判断せず、必ず主治医にご相談ください。当院は医療機関と並行して心身の回復をサポートします。
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担当:豊田英一|鍼灸師・神戸大学大学院修了(心理学専攻)
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ご来院いただける方へ
心理学と鍼灸の両面から心と体の回復を支える、当院のうつ病施術についてご覧ください。
当院の施術例
うつ病につながりやすい考え方のクセ(認知の歪み)が影響しているケースや、その他のうつ病の施術例も併せてご参考になさってください。
オンラインカウンセリング
小学校教員の燃え尽き症候群|オンラインカウンセリング症例
適応障害やうつ状態による不調を改善して、早く復職したいと、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。
ご相談までの経緯
30代 女性 京都府
適応障害やうつ状態による不調を改善して、早く復職したいと、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。
3年前に心身の不調で約1年間休職し、復職しました。しかし半年前、再び仕事への不安が強くなり、二度目の休職をしました。不安になると涙が出て、首を締めつけられるような感覚や、眠りの不調もありました。
この方は小学生のころ、担任の先生に救われた経験から、自分も悩んでいる子どもを助けられる教師を目指しました。授業の準備にも力を注ぎ、土日も仕事をしていました。
一方、ご自身のお子さんの保育園のお迎えは、いつも時間ぎりぎりになっていました。帰宅後も翌日の授業の準備に追われ、お子さんとゆっくり話す時間が取れずにいました。
初回の心身の評価
お話から、燃え尽き状態にみられる次の2つの特徴がうかがえました。
①情緒的消耗感
仕事に力を注ぎ続け、心のエネルギーが尽きたように感じる状態です。
この方も、授業の準備や子どもたちへの対応で心身の余裕を失い、涙や不眠も重なって、仕事を続けられなくなっていました。
②個人的達成感の低下
仕事での手応えや、自分の働きへの自信を感じにくくなることです。
この方は、ほかの先生と比べて自信を失い、できていることより、足りないところに目が向いていました。
自分を追い込む考え方
「120%で働いていた」と話すほど無理を重ねていました。
仕事のことを考え続けて脳も休まらず(脳疲労)、物事を見る余裕を失っていたと考えました(心理的視野狭窄)。完璧を求める考え方や白黒思考も強まり、自分を追い込んでいることに気づきにくくなっていました。
子ども一人ひとりの傷つきに目を配り、困っている子がいれば、すぐに自分が何とかしなければと思っていました。ほかの先生が子どもにきつく当たることも受け流せず、自分のクラスの子には、そんな思いをさせたくないと考えていました。
子どもたちのためにという思いが強い一方で、ご自身の健康や家族との時間が後回しになっていました。
カウンセリングの経過
目的と内容
オンラインカウンセリングは、2週間に1回(月2回程度)のペースで行いました。
①価値観を見直す
燃え尽きから回復していくためには、自分にとって本当に大切なものは何かを振り返り、これまでの価値観を見直すことも大切です。
そこで、「教師としてどうあるべきか」から少し離れ、「自分はこれから、何を大切にして生きていきたいか」を一緒に考えました。
子どもたちを大切にする気持ちと同じように、自分の心と体、家族との時間も大切にする。そのために、どこまで頑張り、どこから人に頼るのか、仕事との向き合い方を見直していきました。
②考え方のクセと心の奥の思い込みを見直す
この方には、「自分は能力が低いから、人一倍頑張らなければならない」という思い込み(スキーマ)がありました。ほかの先生と比べたり、完璧にできない自分を責めたりして、無理を重ねていました。
そこで、この思い込みを見直し、今の自分を認め、人に頼ることも受け入れられるよう働きかけました。また、子どもたちの気持ちに寄り添いながらも、つらさまで抱え込まない関わり方を考えていきました。
③考え込みに気づく練習
休職中も、頭の中では学校や復職のことを考え続けていました。体を休めていても考え込みが続き、頭も心も休まらない状態だったと考えます。
そこで、自分の考えを客観的に見る力(メタ認知)を養うため、ぐるぐる考えていることに気づき、目の前のことへ注意を戻す練習を、日常の中で重ねていただきました。
2~3月
考え方の変化
不安なときに「まあ、いっか」と思える場面が出て、自分を責めることも減りました。3月には、ぐるぐる考える時間も減り、頭の切り替えができるようになりました。「ありのままの自分で、このまま元気になっていこう」とも話されていました。
休めたと感じられるようになったのも、このころです。それまでは苦しくても「なんでだろう、なんでだろう」と考え続けていましたが、「立ち止まった気がする。それがよかったのかな」と振り返っていました。
これまで比べていた、同年代で子育てをしながら教え方も仕事の進め方も上手な先生を、お手本にしようと思えるようになりました。
休職中はほかの仕事も探していましたが、学校への不安がなくなり、子どもたちに伝えたいことが増えていきました。「自分が救われたように、子どもたちの役に立ちたい」という思いをいちばんかなえられるのは小学校の教師だと気づき、「続けていきたい」と話されていました。
生活の変化
3月には泣くことはなくなり、食欲も戻って、体も元気になってきました。本の内容も頭に入るようになりました。
地域のバドミントンサークルで欠員が出て頼まれたときは、お子さんの保育園行事と重なっていたため、以前なら引き受けていたところを断り、保育園行事に参加しました。「今までの自分とは違う」と感じたそうです。
院長の見立て
比べていた先生をお手本にできたことも、狭くなっていた視野が広がってきた表れだと考えられます。
「立ち止まった気がする」という言葉からも、ぐるぐる考え続ける状態から抜け出し、自分を客観的に見られるようになってきたことがうかがえます。
また、頼まれごとを断り、お子さんの行事を選べたことには、価値観の変化が表れています。周りの人を優先する「他人軸」から、自分が何を大切にしたいかで選ぶ「自分軸」へ、少しずつ変わってきたと考えられます。
4月
考え方の変化
落ち込むことが減り、マイナスの考えに入り込んでも早く気づいて抜け出せるようになったそうです。
以前は、クラスの子どもたちを一人も取りこぼさないよう、自分が頑張らなければと思っていました。子どもたちへの関わり方についても、子どもたち自身が取り組む力を信じ、必要なときに支えながら見守ることも大切だと考えるようになったそうです。
家庭での変化
家庭でも、きちんとした母親でいなければという思いがありました。
お子さんのお友達が遊びに来ると、以前は、家をきれいにしておかなければ、遊んであげなければと思い、それが負担だったそうです。今は、無理をせず、自然な自分でいることも大事だと思えるようになりました。
夕食作りがつらい日も無理をしていましたが、ピザなどで済ませてよいと考えられるようになりました。
院長の見立て
教師としても母親としても、すべてを自分が背負わなければという考え方がやわらいできたと考えられます。
子どもたちや家族を大切にしながら、自分の疲れや気持ちにも目を向け、今の自分にできる形で関われるようになってきました。「きちんとできない自分はダメだ」と責めず、自然な自分を認められる場面が増えてきたと感じています。
6月
考え方と働き方の変化
6月に復職しました。
復職直後は、帰宅後や夜から翌朝にかけて再び不安が強まり、涙が出ることがありました。翌日の段取りや授業を何度も考え、「ちゃんとできるだろうか」と不安になったり、理想どおりにできない自分にもどかしさを感じたりしていました。
そのような中でも、「学校でも私自身でいよう」と、自然体でいることを意識していました。
次第に、ほかの先生からどう思われるかが気にならなくなり、自分がよいと思う授業にシンプルに取り組めるようになりました。
子どもたちが気持ちよく勉強できる空間をつくりたいと思い、子どもたちのよい変化に充実感を感じているそうです。
一度目の復職では、完璧にしようとすべて自分で抱えていましたが、今回は人にお願いできるようになったと振り返っていました。
力を抜いて働くことに抵抗を感じることもありますが、できないことは仕方ないと考え、「自分ができる範囲で、一生懸命やろう」と思えるようになってきました。
院長の見立て
人に頼れるようになったことは、完璧でなければダメだという考え方がやわらぎ、今の自分を受け入れられるようになってきた表れだと考えられます。
力を抜くことへの抵抗は残っていますが、今の自分にできることを認め、自分なりのやり方で子どもたちに関わろうとされています。
教師になった原点を再確認し、ご家族も大切にしながら仕事を続けていく。価値観を見つめ直し、自分を責めすぎずに働こうと思えるようになったことが、この方の大きな変化だと考えられます。
※経過には個人差があります。
オンラインカウンセリング
「すべて自分が悪い」と責めていた女性
休職後、着替えや歯磨きもできず、過去の出来事を何度も思い返しては、自分を責めていました。「落ち込む考え方を変えたい」と、オンラインカウンセリングをご利用になりました。
来院までの経緯
30代 女性 東京都
双極性障害と診断され、心療内科に通院していましたが、3か月前に会社を休職しました。すべてにおいてやる気が起きず、特に朝がつらく、着替えや歯磨きもできない状態でした。
ストレスが溜まると菓子パンなどを過食してしまい、「食べることで精神状態を保っている」とおっしゃっていました。
数年前から、「私は何で苦しいのだろう、悲しいのだろう」と思っていました。
ご本人のお話では、ご主人には自閉スペクトラム症の特性があるとのことでした。夫婦の会話はほとんどなく、娘さんの不登校についても相談できずにいました。
学校の先生やソーシャルワーカーへの相談、親の会への参加など、ひとりで頑張っていました。「カサンドラ症候群なんだろうと思います」とおっしゃっていました。
過去にご主人から言われたことや、仕事でのミスを何度も思い返しては、そのたびに落ち込んでいました。そして、「家族の問題は、すべて自分のせい」と自分を責めていました。
「落ち込む考え方を変えたい」と、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。
初回の心身の評価
- 「すべて自分が悪い」という考え方のクセがみられました。
- 同じことを何度も考えるぐるぐる思考(反芻思考)がありました。
カウンセリングの経過
目的と内容
①考え方のクセを見直す
「家族の問題は、すべて自分のせいだ」のように、うまくいかないことがあると、原因はすべて自分にあると考えてしまいます。
こうした考え方のクセは、心理学で「認知の歪み」と呼ばれます。自分を責めることで、苦しさが強まってしまいます。
このクセの背景には、「自分はダメだ」「自分は能力が低い」と、心の奥に自分を否定する思い込みが隠れていることがあります。
この自己否定的な思い込みがやわらぐと、「すべて自分が悪い」という、自分を苦しめる考え方が変わってきます。
そのためには、自分が何を考え、物事をどう受け止めているのかを、客観的に見ることが大切です。
そこで、カウンセリングでは、考え方のクセだけでなく、心の奥の思い込みも見直していきました。
②心理ワーク
カウンセリングのない日にも、自分の考えに気づき、見つめ直せるように、次のような心理ワークに取り組んでいただきました。
- 同じことをくり返し考えてしまうときに、その考えへの執着をゆるめる
- うまくいかなかったことだけでなく、良かったことにも目を向ける
- ひとつの出来事で、自分という人間まで否定していないかを、客観的に見つめ直す
1~2回目(1か月目)
考え方の変化
嫌なことがあったときに、マイナスな考えが続かないように、「嫌なことはポイっとしている」と話されていました。そうすると、「しょうがないな」と少しは頭を切り替えられるようになったそうです。
ただ、会社に連絡することがあった日は、嫌な過去に引っ張られ、ずっと考え込んでいたとのことでした。
生活の変化
何年ぶりかに、7時間眠れた日があったとのことでした。朝起きて、顔を洗うこともできるようになりました。
ただ、食べることで精神状態を保っているご様子は、まだ続いていました。
院長の見立て
ご自身を客観的に見ようとされていましたが、嫌なことがあると、ぐるぐる思考からまだ抜け出しきれずにいました。
一方で、7時間眠れた日があり、朝に顔を洗えるようにもなりました。こうした変化から、睡眠の状態が少しずつ整い、朝のつらさもやわらいできていると考えています。
3~4回目(2か月目)
考え方の変化
カウンセリングで気持ちを話すうちに、自分が何を考え、どう感じていたのかに気づくことで、「そっか」と納得できることが増え、気持ちが楽になってきたそうです。
会社の同僚から何を言われているかを考えることはあったものの、「考えても仕方ない」と少し思えるようになりました。落ち込む日も少なくなってきたとのことでした。
ただ、まだ波があり、自分ではどうしようもないほどの浮き沈みはあるそうです。
生活の変化
娘さんとランチに行けたり、朝起きて掃除ができたりするようになりました。以前は菓子パンやチョコ、スナック菓子をよく食べていましたが、甘いものをそこまで欲しいとは思わなくなったそうです。
院長の見立て
ご自身を客観的に見られるようになってきたことで、ぐるぐる思考から少しずつ抜け出し、気持ちを落ち着かせられるようになってきたと考えています。
娘さんとランチに出かけるなど、コミュニケーションも増えてきました。こうした経験が、「家族の問題は自分のせい」と責める気持ちをやわらげるきっかけになればと考えています。
5~6回目(3か月目)
考え方の変化
以前は周りに合わせることを何より優先していましたが、今は自分を大切にしようと思えるようになったと話されました。
これまでは「ない」ところばかり見ていたけれど、「ある」ところを見ると幸せだと思えるとのことでした。
娘さんとの関わりの変化
娘さんに対して、もっとできることがあったのにという後悔もありましたが、過去は変えられないと受け止め、今は一緒にゆっくり過ごせているとのことでした。
不登校についても話し合い、娘さんもいろいろ考えていることが分かったと話されました。以前は娘さんが落ち込むと一緒に落ち込んでいましたが、今はしっかり支えていこうと思うようになったとのことでした。
娘さんが学校に行く日も、少しずつ増えてきたと話されました。
また、ご本人の調子が悪い日には、娘さんがご飯を作ってくれたと話されました。
ご主人との関わりの変化
以前は、ご主人が何も言わないことを「無関心で嫌だ」と感じていました。今は「嫌なことも言われず、楽なのかな」と思えるようになり、文句を言わずに働いてくれることにもありがたさを感じていると話されました。
ご主人への口調を柔らかくし、それまでご主人が自分で用意していた朝食も、この方が温かい朝食を作るようになったとのことでした。そうした中で、娘さんの将来についても、ほんの少しですが、ご夫婦で話せるようになってきたと話されました。
また、ご主人は娘さんとは仲がよく、娘さんを介して夕食の希望なども伝えるようになってきたとのことでした。
生活の変化
以前は口に食べ物を放り込むような食べ方をしていましたが、今は過食をしなくなったとのことでした。
インターネットで検索する言葉も、以前の「助けて」「心が苦しい」から、最近は「自分を取り戻す」に変わったと話されました。
今はとても落ち着いているとのことでした。
院長の見立て
今の自分を受け入れる気持ち(自己受容)が生まれたことで、ご主人への見方が変わり、口調や日々の接し方も変わってきたと考えています。こうした変化が、ご夫婦で少しずつ話せるようになるきっかけになったのではないでしょうか。
相手が自分をどう思うか、どう評価するかは、自分ではコントロールできません。でも、自分の考え方や行動は、見直していくことができます。
「もう何も変わらない」「この先もずっと苦しい」と思っていても、同じ状況が、この先も続くと決まっているわけではありません。自分の考え方や行動が変わることで、今の状況も少しずつ変えていけると、私は信じています。
※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。
※経過には個人差があります。
施術例
薬に頼りたくない不眠と胃痛
完璧主義による自律神経失調症
「妻・嫁だから」と完璧を求めて自分を責め心身が限界に。薬に頼りたくない深刻な不眠や胃痛、自律神経の乱れでご来院されました。
来院までの経緯
3カ月前から不眠がひどくなり、めまい、頭痛も加わりました。病院では「自律神経失調症」と言われ、薬を服用していました。
満足に眠れない日が続くうちに「眠れなかったらどうしよう」という睡眠への恐怖を感じるようになり、それに伴って自律神経症状も強まっていきました。
さらに「胃が痛く、何を食べてもおいしく感じない」といった胃腸の不調も出てきました。
仕事や家事に加え、義母の介護、孫の世話、近所の高齢者の世話などを抱えていました。少しでもできないことがあると「なんでこんなに要領が悪いんだろう」と自分を責めてしまう状態でした。
仕事に支障が出ることを避けるため、毎日睡眠薬と鎮痛剤を飲み続けていましたが、「できるだけ薬に頼らず整えたい」と感じ、「東洋医学の鍼灸を受けたい」と当院にご来院くださいました。
初回来院時のお悩み
薬を飲まなくても眠れるようになりたい
薬に頼って眠ることへの不安が強く、できるだけ自然な睡眠を取り戻したいという思いがありました。
周りに迷惑をかけたくない
体調不良によって周囲に迷惑をかけることを強く恐れていました。
初回来院時の心身の評価
社会規範に縛られた「べき思考(認知の歪み)」が強い
「妻だから家事を完璧にこなさなければならない」「嫁だから義母の世話をするのは当然」など、役割に基づく「〜すべき」と考え、しんどくても気持ちを押し殺して周囲の期待に応えようとしていました。その結果、「つらい」という本来の感情に気づきにくく、疲れ切っていました。
睡眠に対する強い恐怖と執着
眠れない不安から睡眠に執着し、「夜が来ること」自体に恐怖を感じていました。
他人からの評価が気になる
過剰に自分を責め、他人の評価を気にし続けることで緊張が高まり、不安や身体症状を強めていました。
東洋医学の体質:気滞タイプ
東洋医学的には「気滞タイプ」の傾向がみられ、気の巡りが滞りやすく、緊張・ストレスが胸腹部のつかえや胃腸の不調として出やすい状態でした。
鍼灸施術の経過
施術目的
「妻だから」「嫁だから」という立場で物事を捉えると、社会規範に縛られたべき思考が強まり、「完璧にしなければならない」というプレッシャーで自分を追い込みやすくなります。この状態が続くと、緊張と不安が高まり、自律神経のバランスを崩しやすくなります。
そこで、以下を重点に取り組みました。
- 睡眠への恐怖と執着を和らげ、夜を「怖い時間」にしない
- 「立場」よりも「自分の気持ち」を優先する練習
- 必要な時は人に頼る
- うまくいかない時に自分を責めすぎない
- 他人の評価より、自分のペースを基準にする
施術内容
- 自律神経と女性ホルモンのバランスに配慮した鍼灸施術を行いました。
- 自分を苦しめる「べき思考(認知の歪み)」を見直すカウンセリングを行いました。
- 眠りを妨げる習慣や緊張を整えるセルフケア(生活面の工夫)をお伝えしました。
1~5回目(週1回の来院)
途中で起きることなく眠れる日が出てきました。
胃がすぐに膨れる感じはあるものの、以前より「何か食べたい」と思える場面が増えてきました。
睡眠薬は仕事の前日だけにするなど、使用頻度が少しずつ減ってきました。
頭痛が出た際も、鎮痛剤に頼る頻度が減ってきました。心身の緊張が和らぎやすくなり、症状が強まりにくい日が増えているご様子でした。
6~9回目(週1回)
心身の状態は落ち着きが出てきましたが、身近な方の不幸があり、不眠が再度悪化しました。
また、おさまっていためまいも再発し、「夜が怖い」という思いが強くなってきました。そのため、心身の緊張を和らげる施術を厚めにし、睡眠への恐怖が強まらないよう支援しました。
それでも、疲れている時には「夫や娘に頼ってもいいかな」と思えるようになり、少しずつ頼り方が変わり始めました。
「最近は、周りからどう思われるかではなく、自分がどうしたいかを一番に考えるようにしている」とお話されました。
10~13回目(週1回)
睡眠薬に頼らずに眠れる日が増えてきました。
寝つきの悪い日もあるものの、「こんな日もある」と受け止められるようになり、睡眠に対する恐怖や過剰な不安が和らいできました。
胃腸の調子も整い、友達とランチを楽しめるようになりました。
以前は頼まれた仕事を全て引き受けていましたが、今では「自分がやらなければならない」と決めつけず、無理な場合は断ったり他の人にお願いしたりできるようになってきました。
この変化は、社会規範に縛られた「べき思考」がゆるみ、捉え方の幅が増えてきたことを示しています。
また、「1日の中で睡眠について考えることは少なくなってきた」とのことでした。
「思った通りにできなくても、もう年だし、若いころのように動けなくても仕方ないよね」と考えられるようになった、というお話もありました。
現在
メンテナンスとして、月に1回のペースでご来院されています。
「嫁だからではなくて、お義母さんのことが好きなのでお世話をしている」とお話されました。
以前のように「自分がやらなければならない」というプレッシャーから距離が取れ、義務感ではなく、自分の気持ちに基づいて行動できるようになってきたご様子でした。
※服薬の調整は主治医と相談しながら進めることが大切です。
※経過には個人差があります。
【心理学】うつ病になりやすい考え方とは?
ここで紹介する考え方のクセは、うつ病になりやすくするだけでなく、回復も妨げてしまいます。
▶「完璧じゃない自分は無価値」うつ病の回復を妨げる「白黒思考」
▶「悪いことしか起きない」うつ病の回復を妨げる「心のフィルター」
▶「お世辞に違いない」うつ病の回復を妨げる「マイナス化思考」
▶「迷惑だと思われている」うつ病の回復を妨げる「心の読みすぎ」
▶「どうせうまくいかない」うつ病の回復を妨げる「先読みの誤り」
【このページの作成者】

豊田英一(とよだえいいち)
【国家資格】
・はり師
・きゅう師
・あんまマッサージ指圧師
【学歴】
・神戸大学大学院修士課程修了(心理学専攻)
【著書】
「考え方を変えたいのに、変えられない」
【認定資格・修了】
・介護予防指導士
・医療リンパドレナージセラピスト
・感覚統合入門講習会応用コース修了
【所属団体】
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 福岡県鍼灸マッサージ師会
アクセス
JR福間駅から徒歩15分 駐車場:有り 2台
