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「私は欠陥人間だ」うつ病の回復を妨げる「レッテル貼り」

何か一つ失敗しただけで、「私はダメな人間だ」「生きている価値がない」と、自分という人間すべてを否定するような強い言葉を使っていませんか?

心理学(認知行動療法)では、このような考え方のクセを「レッテル貼り」と呼びます。

レッテル貼りは、「過度の一般化」という考え方のクセが、さらに極端になったものです。過度の一般化とは、一度うまくいかなかっただけで「いつもこうだ」「何をやってもダメだ」と決めつけてしまうことです。

一つの出来事で、自分の「すべて」を否定する心理

レッテル貼りとは、一つの行動を、自分という人間全体を表す札(レッテル)にしてしまうことです。

一度貼ってしまうと、その後は何があっても、その札を通して自分を見るようになります。たとえば、うまくいったことがあっても「たまたまだ」と思ってしまいます。

これでは、うつ病の回復も遠のいてしまいます。当院にご相談に来られる方の中にも、このレッテル貼りに苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。

【心理学】「行動」と「人格」を切り離す

このレッテルをはがすために、心理療法では、起きた事実を正確にとらえ直す練習を行います。

ステップ①:「行動」と「人格」を分けて考える

一番大切なのは、自分がした「行動(ミス)」と、自分の「人格」は別のものだと気づくことです。

たとえば「書類の数字を一か所間違えた」のは行動であって、あなたという人間がダメだということではありません。

ステップ②:ネガティブな言葉を「具体化」する

レッテル貼りでは、「ダメな人間」「欠陥人間」のように、何がダメなのかがはっきりしない大げさな言葉を使います。

そこで、「今回は、提出前に数字を見直さなかった」と、自分が何をしたのかだけを具体的な言葉で言い直す練習をします。

ステップ③:自分に「等身大の評価」を下す

等身大の評価とは、間違えたところは間違えたと認め、それ以外のところまでは否定しないことです。そうすれば、「次は提出前に一度見直そう」とやるべきことがはっきりし、絶望感に飲み込まれなくなります。

失敗したことと自分の価値を結びつけず、事実だけを見る練習を少しずつ重ねることが、自己否定のループから抜け出す確実な一歩になります。

※うつ病の治療や服薬は自己判断せず、必ず主治医にご相談ください。当院は医療機関と並行して心身の回復をサポートします。


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一人で取り組むのが難しい方へ

考え方のクセに気づいても、同じ考えを繰り返して落ち込んだり、自分を責めてしまう。
そんなお悩みを、ご自宅から相談できます。

オンラインカウンセリングでは、今のお悩みを伺い、自分を苦しめる考え方を一緒に整理します。
気持ちや体調に合わせて、心が楽になる考え方や、無理なく過ごす方法を見つけていきます。

話がまとまっていなくても大丈夫です。こちらから少しずつ伺います。

担当:豊田英一|鍼灸師・神戸大学大学院修了(心理学専攻)
60分・8,000円(税込)
LINEビデオ通話・電話でご相談いただけます。

ご来院いただける方へ

心理学と鍼灸の両面から心と体の回復を支える、当院のうつ病施術についてご覧ください。

当院の施術例

うつ病につながりやすい考え方のクセ(認知の歪み)が影響しているケースや、その他のうつ病の施術例も併せてご参考になさってください。

オンラインカウンセリング

「すべて自分が悪い」と責めていた女性

30代 女性 東京都

休職後、着替えや歯磨きもできず、過去の出来事を何度も思い返しては、自分を責めていました。「落ち込む考え方を変えたい」と、オンラインカウンセリングをご利用になりました。

症例の全文を読む

来院までの経緯

30代 女性 東京都

双極性障害と診断され、心療内科に通院していましたが、3か月前に会社を休職しました。すべてにおいてやる気が起きず、特に朝がつらく、着替えや歯磨きもできない状態でした。

ストレスが溜まると菓子パンなどを過食してしまい、「食べることで精神状態を保っている」とおっしゃっていました。

数年前から、「私は何で苦しいのだろう、悲しいのだろう」と思っていました。

ご本人のお話では、ご主人には自閉スペクトラム症の特性があるとのことでした。夫婦の会話はほとんどなく、娘さんの不登校についても相談できずにいました。

学校の先生やソーシャルワーカーへの相談、親の会への参加など、ひとりで頑張っていました。「カサンドラ症候群なんだろうと思います」とおっしゃっていました。

過去にご主人から言われたことや、仕事でのミスを何度も思い返しては、そのたびに落ち込んでいました。そして、「家族の問題は、すべて自分のせい」と自分を責めていました。

「落ち込む考え方を変えたい」と、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。

初回の心身の評価

  • 「すべて自分が悪い」という考え方のクセがみられました。
  • 同じことを何度も考えるぐるぐる思考(反芻思考)がありました。

カウンセリングの経過

目的と内容

①考え方のクセを見直す

「家族の問題は、すべて自分のせいだ」のように、うまくいかないことがあると、原因はすべて自分にあると考えてしまいます。

こうした考え方のクセは、心理学で「認知の歪み」と呼ばれます。自分を責めることで、苦しさが強まってしまいます。

このクセの背景には、「自分はダメだ」「自分は能力が低い」と、心の奥に自分を否定する思い込みが隠れていることがあります。

この自己否定的な思い込みがやわらぐと、「すべて自分が悪い」という、自分を苦しめる考え方が変わってきます。

そのためには、自分が何を考え、物事をどう受け止めているのかを、客観的に見ることが大切です。

そこで、カウンセリングでは、考え方のクセだけでなく、心の奥の思い込みも見直していきました。

②心理ワーク

カウンセリングのない日にも、自分の考えに気づき、見つめ直せるように、次のような心理ワークに取り組んでいただきました。

  • 同じことをくり返し考えてしまうときに、その考えへの執着をゆるめる
  • うまくいかなかったことだけでなく、良かったことにも目を向ける
  • ひとつの出来事で、自分という人間まで否定していないかを、客観的に見つめ直す

1~2回目(1か月目)

考え方の変化

嫌なことがあったときに、マイナスな考えが続かないように、「嫌なことはポイっとしている」と話されていました。そうすると、「しょうがないな」と少しは頭を切り替えられるようになったそうです。

ただ、会社に連絡することがあった日は、嫌な過去に引っ張られ、ずっと考え込んでいたとのことでした。

生活の変化

何年ぶりかに、7時間眠れた日があったとのことでした。朝起きて、顔を洗うこともできるようになりました。

ただ、食べることで精神状態を保っているご様子は、まだ続いていました。

院長の見立て

ご自身を客観的に見ようとされていましたが、嫌なことがあると、ぐるぐる思考からまだ抜け出しきれずにいました。

一方で、7時間眠れた日があり、朝に顔を洗えるようにもなりました。こうした変化から、睡眠の状態が少しずつ整い、朝のつらさもやわらいできていると考えています。

3~4回目(2か月目)

考え方の変化

カウンセリングで気持ちを話すうちに、自分が何を考え、どう感じていたのかに気づくことで、「そっか」と納得できることが増え、気持ちが楽になってきたそうです。

会社の同僚から何を言われているかを考えることはあったものの、「考えても仕方ない」と少し思えるようになりました。落ち込む日も少なくなってきたとのことでした。

ただ、まだ波があり、自分ではどうしようもないほどの浮き沈みはあるそうです。

生活の変化

娘さんとランチに行けたり、朝起きて掃除ができたりするようになりました。以前は菓子パンやチョコ、スナック菓子をよく食べていましたが、甘いものをそこまで欲しいとは思わなくなったそうです。

院長の見立て

ご自身を客観的に見られるようになってきたことで、ぐるぐる思考から少しずつ抜け出し、気持ちを落ち着かせられるようになってきたと考えています。

娘さんとランチに出かけるなど、コミュニケーションも増えてきました。こうした経験が、「家族の問題は自分のせい」と責める気持ちをやわらげるきっかけになればと考えています。

5~6回目(3か月目)

考え方の変化

以前は周りに合わせることを何より優先していましたが、今は自分を大切にしようと思えるようになったと話されました。

これまでは「ない」ところばかり見ていたけれど、「ある」ところを見ると幸せだと思えるとのことでした。

娘さんとの関わりの変化

娘さんに対して、もっとできることがあったのにという後悔もありましたが、過去は変えられないと受け止め、今は一緒にゆっくり過ごせているとのことでした。

不登校についても話し合い、娘さんもいろいろ考えていることが分かったと話されました。以前は娘さんが落ち込むと一緒に落ち込んでいましたが、今はしっかり支えていこうと思うようになったとのことでした。

娘さんが学校に行く日も、少しずつ増えてきたと話されました。

また、ご本人の調子が悪い日には、娘さんがご飯を作ってくれたと話されました。

ご主人との関わりの変化

以前は、ご主人が何も言わないことを「無関心で嫌だ」と感じていました。今は「嫌なことも言われず、楽なのかな」と思えるようになり、文句を言わずに働いてくれることにもありがたさを感じていると話されました。

ご主人への口調を柔らかくし、それまでご主人が自分で用意していた朝食も、この方が温かい朝食を作るようになったとのことでした。そうした中で、娘さんの将来についても、ほんの少しですが、ご夫婦で話せるようになってきたと話されました。

また、ご主人は娘さんとは仲がよく、娘さんを介して夕食の希望なども伝えるようになってきたとのことでした。

生活の変化

以前は口に食べ物を放り込むような食べ方をしていましたが、今は過食をしなくなったとのことでした。

インターネットで検索する言葉も、以前の「助けて」「心が苦しい」から、最近は「自分を取り戻す」に変わったと話されました。

今はとても落ち着いているとのことでした。

院長の見立て

今の自分を受け入れる気持ち(自己受容)が生まれたことで、ご主人への見方が変わり、口調や日々の接し方も変わってきたと考えています。こうした変化が、ご夫婦で少しずつ話せるようになるきっかけになったのではないでしょうか。

相手が自分をどう思うか、どう評価するかは、自分ではコントロールできません。でも、自分の考え方や行動は、見直していくことができます。

「もう何も変わらない」「この先もずっと苦しい」と思っていても、同じ状況が、この先も続くと決まっているわけではありません。自分の考え方や行動が変わることで、今の状況も少しずつ変えていけると、私は信じています。

※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。

※経過には個人差があります。

オンラインカウンセリング

小学校教員の燃え尽き症候群|オンラインカウンセリング症例

30代 女性 京都府

適応障害やうつ状態による不調を改善して、早く復職したいと、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。

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ご相談までの経緯

30代 女性 京都府

適応障害やうつ状態による不調を改善して、早く復職したいと、当院のオンラインカウンセリングをご利用になりました。

3年前に心身の不調で約1年間休職し、復職しました。しかし半年前、再び仕事への不安が強くなり、二度目の休職をしました。不安になると涙が出て、首を締めつけられるような感覚や、眠りの不調もありました。

この方は小学生のころ、担任の先生に救われた経験から、自分も悩んでいる子どもを助けられる教師を目指しました。授業の準備にも力を注ぎ、土日も仕事をしていました。

一方、ご自身のお子さんの保育園のお迎えは、いつも時間ぎりぎりになっていました。帰宅後も翌日の授業の準備に追われ、お子さんとゆっくり話す時間が取れずにいました。

初回の心身の評価

お話から、燃え尽き状態にみられる次の2つの特徴がうかがえました。

①情緒的消耗感

仕事に力を注ぎ続け、心のエネルギーが尽きたように感じる状態です。

この方も、授業の準備や子どもたちへの対応で心身の余裕を失い、涙や不眠も重なって、仕事を続けられなくなっていました。

②個人的達成感の低下

仕事での手応えや、自分の働きへの自信を感じにくくなることです。

この方は、ほかの先生と比べて自信を失い、できていることより、足りないところに目が向いていました。

自分を追い込む考え方

「120%で働いていた」と話すほど無理を重ねていました。

仕事のことを考え続けて脳も休まらず(脳疲労)、物事を見る余裕を失っていたと考えました(心理的視野狭窄)。完璧を求める考え方や白黒思考も強まり、自分を追い込んでいることに気づきにくくなっていました。

子ども一人ひとりの傷つきに目を配り、困っている子がいれば、すぐに自分が何とかしなければと思っていました。ほかの先生が子どもにきつく当たることも受け流せず、自分のクラスの子には、そんな思いをさせたくないと考えていました。

子どもたちのためにという思いが強い一方で、ご自身の健康や家族との時間が後回しになっていました。

カウンセリングの経過

目的と内容

オンラインカウンセリングは、2週間に1回(月2回程度)のペースで行いました。

①価値観を見直す

燃え尽きから回復していくためには、自分にとって本当に大切なものは何かを振り返り、これまでの価値観を見直すことも大切です。

そこで、「教師としてどうあるべきか」から少し離れ、「自分はこれから、何を大切にして生きていきたいか」を一緒に考えました。

子どもたちを大切にする気持ちと同じように、自分の心と体、家族との時間も大切にする。そのために、どこまで頑張り、どこから人に頼るのか、仕事との向き合い方を見直していきました。

②考え方のクセと心の奥の思い込みを見直す

この方には、「自分は能力が低いから、人一倍頑張らなければならない」という思い込み(スキーマ)がありました。ほかの先生と比べたり、完璧にできない自分を責めたりして、無理を重ねていました。

そこで、この思い込みを見直し、今の自分を認め、人に頼ることも受け入れられるよう働きかけました。また、子どもたちの気持ちに寄り添いながらも、つらさまで抱え込まない関わり方を考えていきました。

③考え込みに気づく練習

休職中も、頭の中では学校や復職のことを考え続けていました。体を休めていても考え込みが続き、頭も心も休まらない状態だったと考えます。

そこで、自分の考えを客観的に見る力(メタ認知)を養うため、ぐるぐる考えていることに気づき、目の前のことへ注意を戻す練習を、日常の中で重ねていただきました。

2~3月

考え方の変化

不安なときに「まあ、いっか」と思える場面が出て、自分を責めることも減りました。3月には、ぐるぐる考える時間も減り、頭の切り替えができるようになりました。「ありのままの自分で、このまま元気になっていこう」とも話されていました。

休めたと感じられるようになったのも、このころです。それまでは苦しくても「なんでだろう、なんでだろう」と考え続けていましたが、「立ち止まった気がする。それがよかったのかな」と振り返っていました。

これまで比べていた、同年代で子育てをしながら教え方も仕事の進め方も上手な先生を、お手本にしようと思えるようになりました。

休職中はほかの仕事も探していましたが、学校への不安がなくなり、子どもたちに伝えたいことが増えていきました。「自分が救われたように、子どもたちの役に立ちたい」という思いをいちばんかなえられるのは小学校の教師だと気づき、「続けていきたい」と話されていました。

生活の変化

3月には泣くことはなくなり、食欲も戻って、体も元気になってきました。本の内容も頭に入るようになりました。

地域のバドミントンサークルで欠員が出て頼まれたときは、お子さんの保育園行事と重なっていたため、以前なら引き受けていたところを断り、保育園行事に参加しました。「今までの自分とは違う」と感じたそうです。

院長の見立て

比べていた先生をお手本にできたことも、狭くなっていた視野が広がってきた表れだと考えられます。

「立ち止まった気がする」という言葉からも、ぐるぐる考え続ける状態から抜け出し、自分を客観的に見られるようになってきたことがうかがえます。

また、頼まれごとを断り、お子さんの行事を選べたことには、価値観の変化が表れています。周りの人を優先する「他人軸」から、自分が何を大切にしたいかで選ぶ「自分軸」へ、少しずつ変わってきたと考えられます。

4月

考え方の変化

落ち込むことが減り、マイナスの考えに入り込んでも早く気づいて抜け出せるようになったそうです。

以前は、クラスの子どもたちを一人も取りこぼさないよう、自分が頑張らなければと思っていました。子どもたちへの関わり方についても、子どもたち自身が取り組む力を信じ、必要なときに支えながら見守ることも大切だと考えるようになったそうです。

家庭での変化

家庭でも、きちんとした母親でいなければという思いがありました。

お子さんのお友達が遊びに来ると、以前は、家をきれいにしておかなければ、遊んであげなければと思い、それが負担だったそうです。今は、無理をせず、自然な自分でいることも大事だと思えるようになりました。

夕食作りがつらい日も無理をしていましたが、ピザなどで済ませてよいと考えられるようになりました。

院長の見立て

教師としても母親としても、すべてを自分が背負わなければという考え方がやわらいできたと考えられます。

子どもたちや家族を大切にしながら、自分の疲れや気持ちにも目を向け、今の自分にできる形で関われるようになってきました。「きちんとできない自分はダメだ」と責めず、自然な自分を認められる場面が増えてきたと感じています。

6月

考え方と働き方の変化

6月に復職しました。

復職直後は、帰宅後や夜から翌朝にかけて再び不安が強まり、涙が出ることがありました。翌日の段取りや授業を何度も考え、「ちゃんとできるだろうか」と不安になったり、理想どおりにできない自分にもどかしさを感じたりしていました。

そのような中でも、「学校でも私自身でいよう」と、自然体でいることを意識していました。

次第に、ほかの先生からどう思われるかが気にならなくなり、自分がよいと思う授業にシンプルに取り組めるようになりました。

子どもたちが気持ちよく勉強できる空間をつくりたいと思い、子どもたちのよい変化に充実感を感じているそうです。

一度目の復職では、完璧にしようとすべて自分で抱えていましたが、今回は人にお願いできるようになったと振り返っていました。

力を抜いて働くことに抵抗を感じることもありますが、できないことは仕方ないと考え、「自分ができる範囲で、一生懸命やろう」と思えるようになってきました。

院長の見立て

人に頼れるようになったことは、完璧でなければダメだという考え方がやわらぎ、今の自分を受け入れられるようになってきた表れだと考えられます。

力を抜くことへの抵抗は残っていますが、今の自分にできることを認め、自分なりのやり方で子どもたちに関わろうとされています。

教師になった原点を再確認し、ご家族も大切にしながら仕事を続けていく。価値観を見つめ直し、自分を責めすぎずに働こうと思えるようになったことが、この方の大きな変化だと考えられます。

※経過には個人差があります。

施術例

8年のひきこもり。
「働けない自分」を責めたうつ・適応障害

40代 男性 福津市

うつ病を発症し、適応障害から8年のひきこもりに。「親に申し訳ない」と毎日自分を責め続け、将来への強い不安で心身ともに限界の状態でご来院されました。

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来院までの経緯

約10年前、うつ病を発症しながらも看護師として勤務を続けていましたが、その後「適応障害」と診断され、やむを得ず退職されました。

その後は実家に戻り、異なる職種での再就職を試みましたが、不安感や人間関係の問題から退職を繰り返し、最終的には約8年間、仕事に就けない状態が続いていました。

日々、過去の出来事を振り返っては失敗や後悔に苛まれ、「あの時こうしていれば…」と自分を責めることが多く、将来への強い不安も抱えていました。

親への申し訳なさから「何とかして仕事を再開しなければ」という思いが募る一方、働けない自分をさらに責める悪循環に陥っていました。

心療内科やカウンセリングにも通いましたが、十分な変化を実感できず、次第に一日中ふさぎ込むようになり、食事もままならず、睡眠も取れない日が続いていました。

そうした中で、当院にご相談いただくこととなりました。

初回来院時のお悩み

社会復帰して親への感謝を形にしたい思いは強い一方、その一歩を踏み出す不安が大きく、行動に移せない状況でした。

寝つきの悪さや夜中の中途覚醒が頻繁に起こり、心身の休養が十分に取れない状態が続いていました。

気持ちが落ち込むと立て直せず、数週間にわたり部屋から出られないこともあり、日常生活の維持が困難になっていました。

「ぐるぐる思考(反芻思考)」が止まらず、ネガティブな考えに頭が支配される恐怖感があり、それが就職活動の一歩を踏み出す妨げとなっていました。家族との会話はほとんどなく、この状態が数年間続いていました。

初回来院時の心身の評価

過去への後悔と将来への不安が強い
過去の出来事を振り返って「もっとこうすればよかった」という後悔が強く、将来に対しても常に不安を抱えている状態でした。

自己否定感が強い
自分に対して非常に厳しく、「自分はだめだ」という自己否定的な思考が目立ち、心理的な負担をさらに大きくしていました。

自尊心の低下
自分を大切にする感覚や「達成できる」という自信が乏しく、自尊心が低下していました。これが社会復帰への一歩をためらわせる要因となっていました。

東洋医学的体質評価:気虚タイプ
東洋医学的には「気虚タイプ」の傾向がみられました。全身のエネルギー(気)が不足しやすく、精神的・身体的に疲れやすい状態で、元気や活力が湧きにくいご様子でした。

鍼灸施術の経過

施術目的

心理学では、社会とのつながりが、自尊心の土台になりやすいと考えられています(社会的アイデンティティ)。

自尊心とは、自分を大切にし、自分の価値を実感できる感覚です。

この方は、長期のひきこもりにより社会とのつながりが途絶え、社会的アイデンティティが弱まり、自尊心が大きく低下している状態でした。さらに、過去への後悔や将来への不安が重なり、前向きな行動が難しくなっていました。

そこで当院では、鍼灸とカウンセリングを組み合わせながら、

  1. 「今」に意識を向けて心身の安定を整える
  2. 最も身近な社会的つながり(家族)から再構築する
  3. 小さな外部接点(ハローワーク等)を経て、社会的アイデンティティを回復していく

という順序を重視しました。

まずはお母様との日常的な会話やふれあいを増やし、安心感を取り戻すところから開始しました。そのうえで、外部との接点を段階的に増やし、「社会の中での自分」を取り戻していくことを目指して施術を行いました。

施術内容

① 心身の緊張を和らげる鍼灸施術
自律神経のバランスを整えることを目的に、過度な緊張が抜けやすくなるよう施術を行いました。

② 「今の自分を受け入れる」カウンセリング
過去の後悔や将来不安に引っぱられやすい状態だったため、「今の自分を受け入れる」ことをテーマに整理しました。

③ 捉え方の幅を広げる心理学的ワーク
ネガティブな思考一色になりやすい場面で、見方の選択肢を増やすワークを実施しました。

④ 感情の波に対処するセルフケア指導
深呼吸、リラックス法、マインドフルネス等を用い、不安や落ち込みが強まった際に落ち着きを取り戻す方法を練習しました。

1~7回目(週1回の来院)

睡眠の質が向上し、目覚めが以前よりすっきりする日が増えてきました。深い疲労感やだるさも軽減してきたとのことでした。

セルフケアの継続により、過去のことを考える時間が減り、後悔やネガティブ思考に支配される頻度が少なくなってきたとのことでした。

一方で、落ち込むと自己否定に陥りやすい課題は残っていましたが、感情の波への対処は少しずつ整ってきたご様子でした。

また、「親に感謝しているが、うまく伝えられない」という点についても、言葉にするための自信と安心感を育てていく段階でした。

8~12回目(週1回の来院)

以前は激しい落ち込みが続き、1週間ほど寝込むこともありましたが、現在は2日ほどで回復できる場面が増えてきたとのことでした。

「働こう」という意欲が芽生え、ハローワークへ足を運ぶ行動も見られました。応募にはまだ踏み出せていませんでしたが、社会との接点を作る一歩として大きな進展でした。

また、母親に感謝の言葉を伝えられるようになり、親子関係にも変化が見られたとのことでした。家族という最も身近な社会的つながりが回復することで、安心感と自尊心の土台が育ってきたご様子でした。

13~20回目(週1回の来院)

強い落ち込みや不安感は減り、前向きな捉え方ができる場面が増えてきたとのことでした。

就職に有利な資格を取得するという具体的な成果も得られ、自信につながっていったとのことでした。これは「できる自分」という実感が、社会的アイデンティティの回復を後押ししている状態でした。

また、母親との関係もさらに改善し、互いの思いを言葉にできる場面が増えたとのことでした。

21~25回目(週1回の来院)

ハローワークで資料を集める中で、希望する会社が絞れてきました。応募の準備が整い、実際に行動を起こせたことは大きな一歩でした。

落ち込むこともほぼなくなったとのことでした。

会社見学や複数企業への応募など、自分に合った職場を探す積極的な行動を起こされたとのことでした。

さらに、両親だけでなく疎遠だった姉たちとも会話ができるようになり、家族・周囲とのつながりが広がっていったとのことでした。

現在

就職が決まり、新しい職場で働いてるとのことです。

家族・社会とのつながりが段階的に回復し、「社会の中での自分」という感覚(社会的アイデンティティ)が育つにつれて、自尊心も支えられていったと考えられます。

※通院や服薬に関するご判断は、主治医と相談しながら進めることが大切です。

※経過には個人差があります。

【このページの作成者】

自律神経専門の鍼灸院「鍼灸指圧豊田治療院」院長、豊田英一の写真

豊田英一(とよだえいいち)

【国家資格】
・はり師
・きゅう師
・あんまマッサージ指圧師

【学歴】
・神戸大学大学院修士課程修了(心理学専攻)

【著書】
「考え方を変えたいのに、変えられない」

【認定資格・修了】
・介護予防指導士
・医療リンパドレナージセラピスト
・感覚統合入門講習会応用コース修了

【所属団体】
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 福岡県鍼灸マッサージ師会 

アクセス

JR福間駅から徒歩15分 駐車場:有り 2台

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