「鏡を見るのが辛い……」 「人に会いたくない……」
顔面神経麻痺を発症し、一人でこのような悩みを抱えていませんか?
実は、顔面神経麻痺は単にお顔が動かしにくくなるだけの問題ではありません。外見の変化に対するショックやストレスから、「抑うつ状態」「精神の不調」といった状態にとても陥りやすいことがわかっています¹⁾。
病院でのリハビリや治療はもちろん大切です。しかし、本当の苦しみは、目に見える顔の動きだけでなく、誰にもわかってもらえない「心」のつらさや、「普通の生活」が奪われてしまった悲しみにあります。
なぜ、顔面神経麻痺は「心」を深く傷つけるのか?
顔は、人とつながり、自分を表現するためのとても大切な場所です。そのため、後遺症によってお顔が変化してしまうと、発症前の自分と比べてしまい、毎日の生活の楽しさや自信が大きく失われてしまいます²⁾。
特に、以下のような後遺症による「お顔のゆがみや違和感」は、心に大きなダメージを与えます。
病的共同運動: 目を閉じようとすると口角も一緒に動いてしまうなど、動かしたくない部分まで勝手に動いてしまう、とても不快な症状です。
顔面拘縮(こうしゅく): お顔の筋肉が常にこわばり、引っ張られるような痛みが続く状態です。
医学的にも、こうした外見の違和感を和らげることで、気分の落ち込みが改善することが確認されています¹⁾。裏を返せば、お顔のストレスを我慢し続けることは、心の状態をさらに悪化させてしまう原因になるのです。
「人とのつながり」が怖くなる負の連鎖
顔面神経麻痺が心に与える最大のダメージは、社会や人間関係のなかでの自分の居場所を見失い、自分自身を大切に思う気持ちまで見失ってしまうことです⁴⁾⁵⁾。これを心理学では、社会的アイデンティティの喪失と言います。
うまく笑えない、食事がこぼれるといった症状から、「周りの人からどう見られているだろうか」と過剰に気にしてしまい、次のような悪循環に陥りやすくなります。
人目が怖くなる: 「ゆがんだ顔を見られたくない」「人前で食事をするのが恥ずかしい」と、人と会うことや外出を避けるようになります。
自分の居場所がわからなくなる: 人との関わりが減ることで、家族や職場、友人関係のなかでの「自分の役割や居場所」が見えなくなり、深い孤独感に襲われます⁴⁾。
自己否定に陥る: 「みんなから切り離されてしまった」「顔が元通りにならない自分はダメだ」と、「自己否定(自分自身を強く責め、存在を否定してしまう状態)」に陥るようになります⁵⁾。
「自分はダメだ」という自己否定のループから抜け出せなくなることほど、苦しく辛いものはありません。
目に見えない心のSOSに気づくために

当院では、患者様が抱える「目に見えない心の苦しみ」をきちんと把握し、一緒に向き合うために、「FaCE Scale(フェイススケール)」という、世界中の医療現場で使われているチェック方法を取り入れています²⁾。
これは、お顔の動きだけでなく、「人前での食事や外出のしやすさ」や「心の疲れ具合」を数字にして確認できるものです。最近の研究では、鍼灸をはじめとする適切なケアが、この評価(特に生活の楽しさや精神的な面)を向上させることが報告されています⁶⁾。
当院が鍼灸施術を行うのは、単に筋肉をほぐすためだけではありません。自律神経を整え、お顔のこわばりを優しく取ることで、「また少し人と会ってみようかな」「外に出てみようかな」と思えるような、安心感と前を向くための心のエネルギーを取り戻していただくためです。
心理学と鍼灸の融合で「本当の回復」へ
「もう一生、心から笑えないのではないか……」
その強い不安は、あなたの心が必死に「助けて」とSOSを出しているサインです。
私は、大学院で専門的に学んだ心理カウンセリングの知識と、鍼灸師としての長年の経験から、本当の回復とは「今の自分、そのままでいいんだ」と自分自身を認めてあげられるようになることだと確信しています。
自分を表現する大切な「お顔」のケアを行うと同時に、失われかけた自信や人とのつながりを取り戻すサポートを、全力で寄り添いながら行います。
【顔面神経麻痺に対する当院のアプローチ】
当院の総合ページでは、解剖学(顔面神経や表情筋)・心理学・東洋医学を組み合わせた、当院独自の「神経心理アプローチ」について詳しく解説しています。
日本顔面神経学会のガイドラインでも推奨される鍼灸が、どのようにお顔と心の回復を助けるのか。具体的な施術の流れや改善事例、ご自身の今の状態を知るためのチェックシートもご用意していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
>>あなたの状態は?顔面神経麻痺セルフチェックシートはこちら
>>【心理学修士が解説】なぜ「脳」が大事なのか?神経心理学による顔面神経麻痺の回復を促す仕組み
>>【図解】顔面神経麻痺の急性期リハビリ・ストレッチ方法はこちら
【参考文献】
- 藤原 圭志:顔面神経麻痺後遺症の治療.Otol Jpn 33 (1): 21-25, 2023 。
- 林 健太朗:末梢性顔面神経麻痺におけるセルフケア指導の実際.日本東洋医学系物理療法学会誌 47 (2): 53-64, 2022。
- 羽藤 直人:顔面神経麻痺リハビリテーション.日耳鼻 118: 266-269, 2015。
- 大石 千歳, 吉田 富二雄:黒い羊効果と内集団ひいき ―社会的アイデンティティ理論の観点から―.心理学研究 73 (5): 405-411, 2002 。
- 柿本 敏克:社会的アイデンティティ研究の概要.実験社会心理学研究 37 (1): 97-108, 1997 。
- 林 健太朗:末梢神経性顔面神経麻痺後遺症に対する鍼・手技療法 ―顔面拘縮の軽減を目的としたアプローチ―.日本東洋医学系物理療法学会誌 49 (2): 55-61 。
【心理学】顔面神経麻痺になりやすい考え方とは?
一生治らないと絶望する前に。顔面神経麻痺と「一般化のしすぎ」
動かない顔ばかり見てしまう…顔面神経麻痺の「心のフィルター」
後遺症が残ると決めつける不安。顔面神経麻痺の「先読みの誤り」
不安が治らない現実に変わる?顔面神経麻痺の「感情的決めつけ」
小さな回復を喜べない…顔面神経麻痺を遅らせる「過小評価」の罠
「顔が変わった私はダメな人間」顔面神経麻痺の「レッテル貼り」
ストレスを抱え込む「すべて私のせい」顔面神経麻痺と自己関連付け
【このページの作成者】

豊田英一(とよだえいいち)
【国家資格】
・はり師
・きゅう師
・あんまマッサージ指圧師
【学歴】
・神戸大学大学院修士課程修了(心理学専攻)
【認定資格・終了】
・介護予防指導士
・医療リンパドレナージセラピスト
・感覚統合入門講習会応用コース修了
【所属団体】
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
公益社団法人 福岡県鍼灸マッサージ師会
アクセス
JR福間駅から徒歩15分 駐車場:有り 2台